2022年10月21日 1744号

【未来への責任(359)「笹の墓標展示館」再建に募金を】

 北海道北部にある朱鞠内(しゅまりない)湖は、太平洋戦争中に電力確保のために建設された雨竜ダムによってせき止められてできた日本最大の人造湖である。国内最低気温が記録される極寒のこの地のダム建設には日本人数千人、朝鮮人約3千人が従事させられ240人を超える死者を出したと言われる。

 湖近くの光顕寺には、ダム工事で亡くなった多くの朝鮮人の位牌が保管されている。住職が不在となって久しい光顕寺を訪れそのことを知った殿平善彦(一乗寺住職)さんらは、1980年から共同墓地に埋葬されていた遺骨の発掘調査を行い、5年で16体の遺骨を発掘した。そして1995年には強制動員の被害者たちを記憶・追悼する施設として「旧光顕寺・笹の墓標展示館」を開館した。犠牲者の遺骨や遺品の展示によって強制連行の歴史を伝える日本でも類まれな資料館であった。

 その後1997年に日本人・韓国人・在日コリアンの百人の若者が10日間の遺骨発掘のワークショップに集った。自ら掘り出した遺骨を前にした若者たちはそれぞれが抱える加害と被害の歴史の葛藤を乗り越え友情と連帯を育んだ。遺骨発掘は2001年まで続けられ合計24体の遺骨が掘り出された。また、ワークショップは展示館の雪下ろしや遺骨発掘調査など、朝鮮、中国、台湾、そしてアメリカ、オーストラリア、ドイツ、ポーランドの人たちも参加する「東アジア共同ワークショップ」として現在に至るまで毎年開催されてきた。これまで2千人以上の若者が参加した。

 ところが2019年の積雪により本堂が大きく傾き翌年には完全に倒壊した。そこで展示館再建のための募金活動が展示館に保管されていた位牌、お骨箱、発掘遺品の巡回展とともに開始された。その計画途上の昨年12月、今度は失火により宿泊施設に活用していた庫裡(くり)も焼失してしまった。そのため6千万円を目標に「展示館と宿泊・研修施設」「和解と平和の森」の整備をめざして改めて全国各地で巡回展を展開することとなった。今年は新潟、名古屋、富山、大阪、東京、京都へと現在巡回展が展開中である。

 展示館は「東アジア共同ワークショップに参加する若者たちを迎え学習と交流を通して友情を育む大切な建物」として、また、日本の過去の植民地支配を克服し「偏狭なナショナリズムを超え平和な東アジアを実現」するための役割を果たしてきた。東アジアの平和実現のためにもこの募金活動は成功させたい。

(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)

「笹の墓標展示館」募金呼びかけのホームページ

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