2022年10月21日 1744号

【ドクター 危険なコロナ用飲み薬「ゾコーバ」】

 コロナ用飲み薬として世界で3番目の承認を目指している塩野義製薬「ゾコーバ」という薬があります。

 塩野義は7月の審査で承認を目指したのですがダメでした。この審査の基準は、従来は必須だった「効果の直接証明」がなくても、効果が「推定」されればよいという、今年5月コロナに乗じて成立した世界最悪の「緊急承認制度」によるものです。「ゾコーバ」はその「推定」さえできない代物だったのです。さらに、人での実験はT相、U相、V相と順にクリアしてすべてがそろって認可されますが、この制度ではV相の結果はなくてもよいのです。

 これまでのコロナ用飲み薬の主な効き目は「入院または死亡を減らす」ことでした。ところが、「ゾコーバ」は単に「症状を軽くする」とのデータを出したのですが、最初に決めた12症状ではなく、そのうち5症状だけのデータで効果を「推定」しろと求めたのです。しかも、これには催奇性を始め多くの有害作用が認められています。

 さすがに、製薬会社に甘い審査当局の「専門家」からも「こんなものをこの部会で審査すること自体おかしい」などの意見が出るほどで、認可しませんでした。

 この承認拒否の少し前に、コロナの飲み薬「ラゲブリオ」に対する私たちの批判記事がイギリス医師会雑誌に載り、それが共同通信記事で広く国内でも知られたことで、製薬会社に従順な審査委員にも多少は良い影響を与えたとも思われます。

 しかし、安心はできません。10月には第V相試験の結果も加えての承認が狙われています。実は、このV相試験では、当初主な目的だった「入院又は死亡を減らすこ」とが、8月23日にこっそり「症状を軽減」に変更されていました。このように、試験データに色々なごまかしをして、効果が「推定できる」として認可される可能性があります。

 今後コロナがさほど流行しなければ、この「薬」も売れず、認可に意味はなくなるのでしょうか? いいえ、実はこの「薬」または「毒」は認可さえされれば100万回分政府が買いとる契約をしています。先のラゲブリオの値段は1回当たり9万円強ですから、少なくとも数百億円は税金から塩野義に入るようです。

 さらに、承認により世界最悪の「緊急承認制度」が定着すれば、製薬企業に市民のお金と健康が奪われます。「ゾコーバ」認可は危険です。(筆者は小児科医)
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