2022年10月28日 1745号

【占領下で領土奪取 泥沼化するウクライナ戦争/武力によらない自衛行動は可能だ】

 ウクライナ戦争で市民の犠牲が増え続けている。ロシアによるウクライナ4州の併合に続く、クリミア大橋の破壊、主要都市への無差別爆撃…。エスカレートする戦闘に、ロシアやウクライナの国内から平和を求める市民の声が上がっている。即時停戦、戦争支援をやめろ―全世界から両国の市民に連帯し、運動を強めよう。

違法な「住民投票」

 戦闘がエスカレートした要因の一つにロシアによるウクライナ4州の併合がある。

 ロシア軍の占領下にあるウクライナ南部のヘルソン、ザポリージャ2州と東部のルハンスク、ドネツク2州で9月末、ロシア編入の賛否を問う「住民投票」が強行された。「圧倒的多数が支持」との投票結果をもとに、プーチン大統領は10月5日、ロシア領とする条約に署名、ロシア議会も承認した。

 ロシアは併合を国連憲章の「自決権」に基づくものと正当化する。だが、そもそも軍事占領下での領土併合など戦時国際法のジュネーブ第4条約が禁じる行為だ。砲弾が飛び交う戦闘下で、住民は自由な意思表示ができるはずがない。全ての住民の正当な意思が示されたものと認めることはできない。

 「自決権」を口実に領土分割を正当化することは、新たな紛争の火種を残すことになる。2014年に住民投票でロシアに編入されたクリミアも投票の正当性が疑われ、ゼレンスキー大統領は武力による「領土奪還」を正当化している。

 そのクリミアとロシアをつなぐ橋が10月8日、爆破された。ロシアはウクライナの治安機関の犯行と断定し、10日から13日にかけミサイル攻撃に出た。その範囲はほぼウクライナ全土に及び首都キーウ(キエフ)では11の重要インフラが破壊された。

 一方ウクライナ軍はロシア占領地への反撃とともに、11日、ロシア南部の変電所を攻撃した。双方の攻撃は民間施設、重要インフラの破壊に及んでおり、明らかに国際法に違反する戦争犯罪だ。

兵役拒否の闘い

 ロシアでは、プーチン大統領が予備役招集を発令(9/21)した後、数十の都市で抗議行動が起こった。モスクワ中心部でも「戦争反対」のデモがあり、約1400人が拘束された(9/23読売)。招集発令後、ロシア国民の60万人から70万人が出国したと報じられている(10/4米経済誌フォーブス)。

 ウクライナでも良心的兵役拒否を求める声があがっている。「ウクライナ平和主義者運動」が9月21日の国際平和デーに採択した「平和アジェンダ」(抄訳別掲)には、ウクライナ憲法にも規定されている戦闘ではない非軍事的な役務の選択さえ認められない現状が告発されている。彼らは「戦争ではなく、即時停戦、和平交渉を行え」と訴えている。これは戦争当事国からだけでなく、全世界からのものだ。

 アジェンダは「侵略に対する自衛権は武力ではなく、非武装、非暴力の手段によって、行使しなければならないし、行使することができる」と強調している。人を殺すな。この規範に立ち返り、いかなる場合も軍隊を擁護する立場には立たないと宣言するウクライナ平和運動に連帯しよう。自由な意思表明ができる環境の下でこそ、自己決定権は有効性を持つのだ。

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