2022年10月28日 1745号

【感染症法など一括改定法案に反対 医療機関の強制動員で医療削減 検査・医療の抜本拡充放棄 新型コロナ】

 岸田政権は10月7日、感染症法をはじめとする「感染症法等改正」一括法案を閣議決定した。「新型コロナ感染拡大下で病床が確保できず医療がひっ迫した」ことへの「対策」というが、要は医療機関の強制動員で医療削減を推進するものだ。地域から医療削減するな≠ニ、反対の声を上げなければならない。

 法案の主な内容は、都道府県が事前に計画を策定し、医療機関と医療措置協定を結ぶことで病床や外来医療の確保などを義務づけるというものだ。

協定締結の強要

 協定は合意により締結されるが、医療機関は協議の拒否はできない。合意しない場合でも、医療機関は都道府県医療審議会の意見を尊重する義務を負う。協定に違反した場合は医療機関名を公表し、さらに従わない場合は大学病院等の特定機能病院、地域医療支援病院など診療報酬の優遇措置を受けている病院の承認を取り消すことを可能とする。

 また、感染拡大初期に初動対応(流行初期医療確保措置)を行う協定を結んだ医療機関の費用に公費だけでなく保険財源も投入する規定をもりこんだ。

 これらは、新型コロナへの対応で都道府県と医療機関との調整が十分に行われず、医療提供体制がひっ迫したことへの対応とされている。昨年11月、岸田政権の「取組の全体像」で方針化された「「病床(いわゆる「幽霊病床」)の実態を把握し病床確保」の延長線上にあるものだ。

 政府は「医療機関との認識のずれや医療人材の確保の困難さなどから、…病床確保や発熱外来等の医療体制が十分に確保できないことがあった」(6/15新型コロナ対応に関する有識者会議)の課題の解消と言う。

現場に責任押しつけ

 しかし、病床を確保できなかったのは、国会で議論され政府自身作るとした臨時病院さえ、まともなものは福井県の100床のみという、医療・公衆衛生の拡充を一貫して放棄してきたことが主原因だ。

 医師・看護師等の医療人材不足を意図的に放置してきた医療政策を顧みることなく、「病床提供しない病院が悪い」と病床提供を実質的に義務化し、責任を病院に押しつけるものだ。

 一方で岸田政権は、2021年度だけで消費税を原資とする「病床機能再編支援」として57億9千万円を使って急性期病床など2770床を削減している。コロナ禍で病床が足りないと言いながら、「地域医療構想」に沿って病床削減を進める許しがたい棄民政策だ。

 法案は、検査も病床も医療従事者も抜本的拡充を拒否してきた結果、受診や入院の制限でコロナ死亡者を増大させてきた棄民政策を、医療機関の強制動員で取り繕い正当化するものだ。

 法案には保健所体制・機能強化もうたわれているが、増員方針はなく、内実は「IHEAT(アイヒート)」と名付けた専門家、医師、保健師等の外部人材バンクの整備のみで、体制強化にはほど遠い。

どさくさで医療DX

 さらに、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進のためとして、匿名化した個人情報を第三者に提供可能な仕組みの整備や、マイナンバーを活用したワクチン接種対象者の確認の仕組み導入、データベース整備を行う。医療・製薬資本のもうけのための患者情報提供やマイナンバー活用など、コロナ対策と関係のない医療DXの推進をどさくさに紛れてもぐりこませている。

 しかも、この法案は30本に及ぶ法律を一気に変える一括法案で、21年5月に強行されたデジタル関連法同様まともな審議時間すら確保されない可能性がある。

 政府は今、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進め24年秋に保険証を廃止することや、発熱外来の受診を高齢者などに限る受診制限などを次々と打ち出している。必要なのは、検査や医療供給体制、保健所体制などの抜本的拡充だ。岸田政権のコロナ無策=棄民政策を許さず、地域から取り組みを強めよう。



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