2022年10月28日 1745号

【ひろゆきの沖縄反基地運動叩き/デマ拡散で自説を正当化】

 実業家のひろゆき(西村博之)が、沖縄の辺野古新基地建設に対する抗議行動を揶揄する言動を執拗にくり返している(関連記事8面)。しかも、自分の正しさをアピールするために、沖縄に関するデマを「真実」として吹聴している。

 たとえば、米軍普天間基地(宜野湾市)について、自身のユーチューブ配信でこう語った。「もともと普天間の基地があって、その普天間の基地の周りに住宅を作っちゃったんすよね。普天間の周りってもともと何もなかったところだったんですけど、基地で働く人の需要があったりして」

 まるで、住民が危険に近づいたかのような言い分だが、事実は違う。普天間基地のある場所は戦前、役場や学校、郵便局などがある宜野湾村(当時)の中心部だった。約8800人が生活を営んでいた。

 沖縄戦で宜野湾に侵攻した米軍は占領と同時に土地を接収し、飛行場建設を始めた。避難したり収容所に入れられていた住民が帰村したときには飛行場は完成しており、米軍に割り当てられた周辺の土地での集落再編を余儀なくされた。

 ひろゆきの主張は、作家の百田尚樹が自民党議員の勉強会で語ったことで有名になった沖縄デマの典型だ。調べればすぐにウソだと分かることを、そのまま拡散するとは悪質きわまる。

  *  *  *

 「『自衛隊は出て行け。米軍基地は出ていけ』で得するのは誰なのか。ロシアと中国だ。僕には、中国やロシアに有利な環境を作ろうとしている人たちが、座り込みによって、移設工事のトラックを妨害しているように見える」

 辺野古の抗議行動を観た感想をひろゆきはこう述べている。「戦争の準備はやめろ」「再びの沖縄戦を許さないぞ!」というシュプレヒコールが聞こえたはずだが、その意味を考える気はないらしい。

 辺野古新基地が完成したあかつきには、陸上自衛隊版海兵隊といわれる水陸機動団が常駐し、米海兵隊とともに共同使用する合意が日米間で取り交わされている。米軍の辺野古弾薬庫を自衛隊が共同使用する案があることも判明した。

 こうした動きの背景には米軍の「中国封じ込め」戦略があり、「台湾有事」を想定した日米共同作戦計画の原案がすでに作成されている。沖縄への自衛隊のミサイル配備は島々を守ることが目的ではない。中国の太平洋進出を阻止する米国の軍事戦略の一環なのだ。

 台湾周辺で米中武力衝突となれば、全島軍事要塞化した沖縄は攻撃目標となる。住民に逃げ場はない。戦場となった島で多くの住民が犠牲になった沖縄戦の二の舞だ。辺野古新基地建設に反対する人びとは「そうさせてはならない」と訴えているのである。

 ひろゆきはこのほかにも、「沖縄の人って文法通りしゃべれない」など、沖縄への偏見を増幅させる発言を連発している。それがネット社会ではウケると計算しているのだろう。「論破王」などと称される男の正体はデマ拡散王であった。
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