2022年12月02日 1750号

【ノーモア沖縄戦の会 シンポジウム/ミサイル戦場と化す沖縄・南西諸島/軍事緊張あおるな 平和外交に徹しろ】

 戦闘車両が街中を走り回る―「台湾有事」を想定した日米共同軍事演習が繰り返されている沖縄・南西諸島(琉球弧)。沖縄を再び戦場にさせてはならないと「ノーモア沖縄戦 命(ぬち)どぅ宝の会」が11月12日、沖縄市で「沖縄のミサイル戦場化を許さない島々シンポジウム」を開いた。

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 昨年11月。琉球弧での軍事演習に米軍が初めて参加した。この11月、過去最大規模の日米共同軍事演習「キーンソード23」へとエスカレート。演習は自衛隊基地の共同使用の他、公道走行や民間船舶、港湾利用にまで拡大している。

戦争拒否する無防備宣言

 軍事ジャーナリスト・小西誠さんは「中国へのミサイル基地と化す沖縄列島」と題し、日米の軍事戦略について解説。戦争を拒否する闘いに言及した。

 軍事費の2倍化はミサイルの長射程化と量産化を目的としたものが大半を占める。1500発のミサイル量産体制はミサイル部隊増強を意味する。ミサイル自体も長射程化や超高速滑空弾など攻撃力を高める。すでに「島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾部隊」の組織化が進んでおり、沖縄への配備を想定しているのは明らかだ。

 米軍は対中関係を考慮し、自ら中距離ミサイルを構える困難性について検討を加えている。小西さんは米国最大の軍事戦略シンクタンク「ランド研究所」の報告書に「日本自体に中距離ミサイル開発を促し、米軍がそれに協力する」とあることをあげ、自衛隊のミサイル部隊増強は日米協議の上で進んでいると指摘した。

 どのように戦争を回避するか。外交交渉に徹することは前提として、小西さんは軍民分離原則、無防備・非武装地域宣言の有効性に触れた。戦前、沖縄は軍隊のいない非武装地帯だった。日本軍の配備が住民を巻き込む悲劇を生んだ。その教訓である「命どぅ宝」は「すべての戦争を拒否する権利」を言い表したものだと位置づけた。


緊迫する島々

 国境の町、与那国島では陸上自衛隊の「16式機動戦闘車」が島民の生活道路を走り回っている。105_砲を搭載して公道を走るのを避けるよう県は求めてきたが、自衛隊は強行した。県内初めての暴挙だ。

 町議会議員の田里千代基(たさとちよき)さんは、政府に翻弄(ほんろう)され、分断された地域の実情を語った。かつて人口1万人を超えた与那国。台湾の経済圏と与那国の生活圏が一体化していた。「平成の自治体合併」を住民投票で否決、「自立ビジョン」(05年3月)をまとめた。台湾との交易路を開き、チャーター便を運航。「友好の推進、東アジアの平和」をうたった。政府は「経済特区」の申請を認めず、陸上自衛隊(沿岸監視部隊)を配備(16年)。地域は分断され、人口は1500人に減った。そこに自衛隊員が200人。地域を破壊しながら「台湾有事」と危機をあおる政府への怒りがぶつけられた。

 中国の軍事挑発の材料となってきた尖閣諸島を行政区に持つ石垣市から市議会議員の内原英聡(ひでとし)さんは「緊張は和らいできている」と報告。中国船で漁師が困っているとの言説にも「地元の漁民はそこにはいかない」と、緊張をあおるために流されるデマを批判した。

実態を知らせる活動

 「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」共同代表の清水早子さんは「島を見捨てないでほしい」と悲痛な訴えをした。宮古では分断と懐柔策が露骨になっている。12月11日には、自衛隊分屯50周年記念行事として曲芸飛行隊ブルーインパルスが下地空港の使用を計画。下地空港は復帰前の71年、当時の琉球政府と日本政府は軍事利用しない覚書を結んでいる。県知事の判断がためされている。

 離島だけではない。沖縄島うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地にミサイル部隊の配備が狙われている。分屯地周辺には学校や保育園などがある。「防衛省には住民の姿は見えない」と「うるま市島ぐるみ会議」共同代表の照屋寛之さんは怒りを隠さない。写真展を7か所で開催し、実態を知らせる活動を粘り強く続ける必要性を語った。「政治の目的は平和な国家を築くこと」と軍事大国へ突き進む自公政権を厳しく批判した。

 会の山城博治共同代表は、自治体に空港・港湾など軍事利用を拒否させる要請行動の必要性を強調した。

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