2022年12月02日 1750号

【岸田軍拡は大増税とセット/命と生活を脅かす蛮行を許すな】

 岸田政権が目指す軍事力の増強に必要な財源について、政府・与党内では「増税で確保すべきだ」とする意見が主流になっている。

 政府の有識者会議が11月22日に示した報告書は「防衛力の抜本的強化は、安定した財源確保が基本だ」と指摘。歳出改革による税源捻出を優先すべきだとしつつも、「足らざる部分については国民全体で負担することが重要だ。国債の発行が前提となることがあってはならない」と主張した。

 ただし、「成長と分配の好循環の実現に向けた企業努力に水を差すことがないよう、議論を深めるべきだ」としている。つまり、軍事費増額の財源は企業負担ではなく大衆課税で賄うべき、ということだ。

 大軍拡の財源をめぐっては、生前の安倍晋三元首相が新規国債の発行(要は借金)を提唱していた。今でも安倍応援団の学者・文化人らは「防衛国債」案にこだわっている。増税案では世論の合意を得られず、軍拡計画そのものが潰れるとの懸念からだ。

 実際、ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍事費の増額を容認する意見は増えているが、増税となると強い反発がある。FNNの世論調査(11/12〜11/13実施)によると、軍事費の増額を所得税や法人税の増税でまかなうことについて「反対」45・9%、「どちらかと言えば反対」20・1%だった。世論の3分の2が反対しているのである。

 それでも岸田政権は増税による軍拡に舵を切ろうとしている。借金頼みは「安定した財源確保」ではないとの判断からであろう。

5兆円あれば…

 日本の軍事費は国内総生産(GDP)比1%前後で推移し、補正予算を含めると年6兆円前後になる。自民党が主張するように5年以内に倍増するなら、新たに5兆円以上が必要になる。所得、法人の2税で賄うとすると約15%の増税になる計算だ(11/15東京新聞)。

 軍事費5兆円増と簡単に言うが、それだけの国費があれば何に使えるのか。教育施策に使う場合、大学授業料の無償化は年1兆8千億円で実現する。小・中学校の給食無償化は年間約4400億円で可能だ。

 物価高対策では消費税率を2%分引き下げる財源になる。異常な物価高に苦しむ年金生活者のために、支給額を月1万円増やすこともできる。医療に使う場合は自己負担額をほぼゼロにできる(以上、東京新聞の試算による)。

 貧困化による生活破壊が加速する今、大軍拡のためにさらなる負担増を人びとに強いるなんて、憲法が保障した生存権の否定である。それでは、飢えた民衆そっちのけで核・ミサイル開発に明け暮れるどこかの国と変わらない。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS