2022年12月02日 1750号

【明日をつくるなかまユニオン/一人ひとりが尊重される労働組合に/ジェンダーについて知ろう】

 労働組合には、さまざまな労働相談が寄せられるが、パワハラやセクハラの問題が多いのが最近の特徴だ。なかまユニオンは、ユニオンとしてジェンダー平等社会をめざすためにも、新たな企画にチャレンジした。

 9月30日に大阪市内で、「なかまユニオン アップデート講座―あなたの常識を疑え―」が開かれた。第1回のテーマは「一人ひとりが尊重される労働組合であるために」。これは、誰もが尊重される職場づくりや組合づくりのために、アップデート(更新)を進めていくためのものだ。

反動的にならないために

 この企画の意図を、井手窪啓一なかまユニオン委員長は、次のように語る。

 ―「マンスプレイニング」「トーン・ポリシング」と今回のチラシに書いていますが、1年半ぐらい前までは、私もこの言葉を知りませんでした。

 若い男性が赤ちゃんをおんぶしている姿を見たり、中学や高校の家庭科の授業が男女別ではなくなったり、20年ぐらい前にはなかった変化が生まれています。

 私たちは、民主主義を守る立場であると思っていますが、時々、変なことを言っている人に遭遇することがあります。その人たちは、反動的な人というわけではありません。

 それは、30年前の常識に基づいてしゃべっていると、民主主義的よりも反動的な立場に近くなってしまう状況へと、社会が変化してきているからです。

 そういう変化を常に勉強していかないと、私自身もいつの間にか反動勢力の一部になっているかもしれない。だから、こういう企画を持ちました。ともに謙虚に勉強していきましょう。

人間関係の常識を見直す

 講師は、ブラジル人解雇事件やパワハラ労災解雇事件で代理人を務めた弘川欣絵(よしえ)弁護士。

 講座は、12個の質問で人間関係の「常識」をチェックし、改めて自分を見直すところからスタートした。

 ▽血液型で相手の性格を想像してしまう▽話を途中で遮(さえぎ)ったり、軽く扱うような態度をとることがある▽「普通は〇〇だ」「それって常識でしょ」と言うことがある▽受付、事務職と聞くと女性を連想する―など。これにより、自分自身の常識を見直すことができる。

 弘川弁護士は具体的な経験も交えて、社会に潜在的に存在している偏見と差別を紹介した。

1 アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

 自分自身が気づいていない、ものの見方やとらえ方の歪み。その人の過去の経験や知識、価値観、信念をベースに認知や判断を自動的に行い、何気ない発言や行動として現れる。

2 マンスプレイニング

 マン(男性)がエクスプレイニング(説明する)。「女性は男性よりも知識が無い」というジェンダーに基づく偏見から、男性が見下す態度で女性に説明する行為。

3 トーン・ポリシング

 トーン(話し方)・ポリシング(取り締まり)。話し方や言葉遣い、態度や感情を批判する「論点ずらし」。

相手を尊重する組合に

 男性の参加者からは「最初の質問で自分の偏見がよくわかった」「自分は民主的だという思いが驕(おご)りではないかと自問することが大切だと思った」などの感想が寄せられた。

 無意識のうちに誰かを傷つける差別とは何か、理解と認識が深められた。

 M.E書記長(代行)は「表面的な『多様性』を推進するだけでは差別はなくならない。その背後にある構造的差別を解消しなければならないという視点を持たなければならないこと、現在の社会では、ジェンダーバイアス(ジェンダーに基づく偏見)はないはずがないので、逃げずに向かってほしいということが印象に残っています。これからも学習、点検、対話を続け、相手を尊重する居心地のいいユニオンをつくるため、みんなで考えていきたいです。その始まりとなる集まりでした」と感想を語る。

 なかまユニオンのアップデートは進む。



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