2022年12月16日 1752号

【被害者が生きているうちに解決を/今こそ謝り、つぐなうとき/強制動員問題解決へ院内集会】

 「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」は11月30日、被害者の権利回復につながる解決に向け政府・国会に声を届けようと院内集会を開いた。

 討論では、外村(とのむら)大(まさる)・東京大学教授を進行役に小説家の中沢けいさん、元外交官の東郷和彦さん、五味洋治・東京新聞論説委員らがマイクをとる。

 外村さんが「これは労働問題。労働運動団体は歴史を教訓にすべきだ。“安上がりで使い捨ての労働者を短期的に入れてしのぐ”が戦時の労務動員。今も同じではないか」と問うたのに対し、鳥井一平・移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事が応答する。

 「現代の奴隷制である外国人技能実習制度には前史がある。強制連行の歴史が示す事実を直視しなくてはならない。外国人を管理・監視する入管政策が連綿として続いてきている」と指摘し、「反省と謝罪、清算がないと次に進まない。民主主義の真髄は投票権のない人々、声を上げられない人々のことを考えること。人身売買・奴隷労働の根絶は民主主義の約束だ。労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会を実現しよう」と呼びかけた。

 日韓の文化交流に関連して「韓国では最近、日本文学の翻訳が難しくなっている。政治が何やっても文化だけは続くと期待してほしくない」と憂慮するのは、小説家の平野啓一郎さん。「大法院判決が出たとき判決全文を翻訳・掲載した新聞社は1社もなかった。さんざん嫌韓を煽った国民が判決文を読んでいない。これでは、解決の機運が高まってもメディアをはじめ大反対し、台無しになってしまう」と警鐘を鳴らす。

 「原告の一人、李春植(イチュンシク)さんは当時17歳。高校生の男の子が親元を離れ、海を渡る姿を思い描いてほしい。その子に日本企業が何をしたか。彼らがされたことを読んで感じたのは、いくら何でもかわいそうということ。技能実習生も同じだ。その感覚が麻痺してしまってはいけない」。一人一人の人間の具体像、生の人間がどんな思いをしてきたかに向き合った解決の大切さを平野さんは強調した。

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