2022年12月23日 1753号

【沖縄陸自「師団」化 米海兵遠征軍と同格へ/対中国日米共同作戦の準備公然化】

在沖陸自3倍化

 「台湾有事」をめぐり、鹿児島県種子島から沖縄県与那国島に至る島々を対中国攻撃拠点とする日米共同作戦。日本政府はその存在を認めないまま、着々と「事実」を積み上げている。

 防衛省は12月5日、自民党の国防部会・安全保障調査会合同会議で、那覇に司令部のある陸上自衛隊第15旅団を「師団」に格上げすると説明した。旅団を構成する部隊の内、普通科連隊を現行の一つから、二つに増やす。「師団」となれば所属隊員は現行約2千人から約5千人〜8千人規模にさえなる。司令官の階級も一つ上げ、陸将をあてるという。陸上幕僚長に次ぐナンバーツーの位だ。

 この増強の狙いは、米軍との共同作戦の強化のためだ。共同作戦のパートナー第3海兵遠征軍。沖縄県うるま市のキャンプ・コートニーに司令部がある。司令官の位は海兵隊中将。大将に次ぐ地位だ。陸自側を格上げすることで、日米の司令官が「同格」となり、軍事作戦の連携がより迅速化するという。「本番」を見据えた準備が公然と進行しているのだ。


インフラ軍事転用

 共同作戦の軸は、米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)にある。40もの有人島を中国艦船への攻撃拠点に利用、攻撃、転戦を繰り返す作戦だ。この作戦を成り立たせるには、それぞれの島に海兵隊の主要兵器「ハイマース」(高機動ロケット砲システム)や軍事物資の運搬船が接岸できる港が不可欠だ。

 これの準備も抜かりなく進めている。11月にまとめた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書。その中の「総合的な防衛体制の強化」として「公共インフラ」の役割を次のように書いている。「特に南西諸島の港湾や空港などの公共インフラは安全保障上の重要な機能を担い得る。自衛隊・海上保安庁の配備・利用が想定される空港・港湾、国民保護のために必要な空港・港湾等を含め、有事を見越して、平時から政府全体で備えることが重要である」

 「政府全体で備える」とは、自治体管理の港湾・空港を軍事利用できるよう国土交通省がけん引するということだ。既に、自治体の管理権限は無きに等しい。公共インフラの軍事転用は自衛隊だけでなく、米海兵隊用でもあるということだ。

 政府・防衛省は11月8日、沖縄島中城(なかぐすく)湾港で軍事車両を陸揚げし、12月11日、宮古島空港に航空自衛隊「ブルーインパルス」を送り、軍民一体の実績づくりを始めている。

 この国の形を大きく転換することになる部隊配置や軍事利用施設配置など、今後の「軍事3文書」に書き込むと言っているが、そもそも閣議で決定するようなものではない。だが目の前で起こっていることは、それすら待たず「事実」が着々と積み上げられているということだ。軍事優先国家の危うい姿だ。

「キューバ危機」の教訓

 日本の軍事力強化が中国に脅威を与えていることは間違いない。長距離射程のミサイルが琉球弧の島々から、中国に向けられている。脅威でないわけがない。

 ウクライナ戦争でのロシアの「核威嚇」をとらえ、60年前の核戦争寸前となった「キューバ危機」の再来と指摘されることがある。1962年、米ソ冷戦期のただ中で、米ワシントンからわずか約2000`bにあるキュ―バにソ連(当時)は核ミサイル基地を建設した。社会主義革命を成し遂げたキューバを米国から守るためとの理由だ。米政府にとって、のど元にナイフを突きつけられたも同然。核搬入を阻止するため海上封鎖の軍事行動に出た。結果的に、ソ連の核運搬船は引き上げ、米政府はトルコに配備していた対ソ連核ミサイルを撤去した。

 「キューバ危機」を教訓とするなら、中国・北京から1500`bというのど元で、大量のミサイルを構えてはならないということだ。中国もまた大量の中距離ミサイルを削減するなど軍縮交渉を始めるべきだ。

 二度と戦争を起こさせないためには、一切の軍事演習をやめ、軍縮と外交交渉に徹すること。戦争屋による「軍拡」の掛け声を封じ込まなくてはならない。

   *  *  *

 ZENKOスピーキングツアー沖縄会場で沖縄戦研究者である沖縄国際大学名誉教授石原昌家さんは、1914年日本帝国軍は、沖縄島中部に「進入軍」が上陸したとの想定で軍事演習を行っていたことを話した。31年後の45年、まったく演習と同じ状況の沖縄戦が引き起こされた。「演習の後には本番がやってくる」と石原さんは強調した。「本番」を想定した演習などさせてはならないのだ。
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS