2022年12月23日 1753号

【原発新増設・運転延長決めた経産省 従来ルールすら投げ捨て 原発回帰の暴挙許すな】

 福島原発事故以降、自公政権は原発の運転期間40年ルールをなし崩しにし、60年とする策動を続けてきたが、原発新増設を認めない方針はぎりぎりのところで維持してきた。だが岸田政権は市民の声も聴かず、原発再稼働に加え、新型炉の建設まで容認する露骨な政策転換を強行した。このような暴挙は許されない。

問題原発ほど長く

 経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力小委員会が11月8日に打ち出した案は、(1)現状維持(2)原発の運転期間原則40年、例外60年の「上限撤廃」(3)60年は維持した上で原子力規制委員会の審査などで運転できなかった期間を上乗せできる―の3つ。いずれも原発廃止でも削減でもない点では五十歩百歩であり、とうてい容認できないものだ。

 原発を推進する経産省の会議という性格上、(1)はあり得ず、原発推進の委員からは(2)を求める声が多かったが、上限の完全撤廃は市民の反発が大きいと見送られ、(3)に決まった(12/8)。



 現状で日本最新の原子炉である北海道電力泊原発3号機(2009年設置)は今までのルールでは遅くとも2049年に廃炉となるのが原則だが、新ルールでは、今すぐ再稼働しても、実に2079年まで運転できることになる。2012年5月の「定期点検」で停止するまで、設置後の稼働期間がわずか3年しかなく、あと57年もあるからだ。

 そもそも規制委による審査が長引いている理由は、その原発に問題があるか、電力政策上重要でないかのどちらかだ。停止期間を運転期間に含めず、上乗せ計算できることになれば、問題のある原発ほど建設から廃止までの期間を長く確保できることになる。

 老朽原発の運転だけでも危険なのに、規制委の審査にまじめに対応してもしなくても結果が同じとなれば、ますます隠蔽、不正が横行する。政府公認の「モラルハザード推進」政策だ。

「次世代型原発」も

 政府は、今回「次世代型原発」の開発も方針として打ち出した。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分候補地へは、北海道寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村が応募し「文献調査」が進む。だが、続く地域が現れない現状に推進勢力は危機感を募らせており、核のごみを出さないとされるトリウム型原発などが有力視される。

 だがトリウム原発は世界のどこでも実現していない。

 燃料の冷却にナトリウムを使う点で廃炉となった高速増殖炉「もんじゅ」と同じ。危険性は計り知れない。

 また、政府は新型炉について「メルトダウンが起きても燃料デブリを捕獲する『コアキャッチャー』をつけるため、福島のようなデブリ飛散は起きない」と宣伝する。だが福島では爆発で大破した原子炉建屋から放射性物質が環境中に拡散した。燃料さえ飛散しなければ安全というデマ宣伝がまた繰り返されている。

委員もでたらめぞろい

 こうしたでたらめな原発政策を決めた原子力小委員会の委員もでたらめ人物ぞろいだ。18人の委員のうち反対派は松久保肇委員(原子力資料情報室)ただ1人。遠藤典子委員は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による福島原発事故賠償制度を絶賛する著書を書くのと前後してみずから原賠機構の委員になった。越智小枝委員(元相馬中央病院医師)は、原子力産業協会の公式ユーチューブチャンネルに出演し、福島の甲状腺がんが「増えたという証拠はない」と発言している。

 松久保委員は当初、孤軍奮闘状態だったが「発言に筋が通っている」と審議の中で賛同する委員が現れ、決定時に反対は2人となった。事実と科学に基づいて議論すれば、御用機関にすら影響を与えられる可能性があることを示している。

 「福島事故前の政策」への回帰(11/29神戸新聞)など、メディアからも批判の声が上がる。福島避難者訴訟原告も「放射能の心配をしなくてよいことが、あるべき原発政策」と批判を強める。無謀な原発回帰政策をやめさせなければならない。

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