2022年12月30日・2023年01月06日 1754号

【大阪地裁不当判決に控訴/「君が代」処分撤回 調教NO!控訴審を国際法で闘う/元大阪市立中学校教員・原告 松田幹雄】

不起立の理由を無視し、従来判決をつまみ食い

 大阪地裁(横田昌紀裁判長)は11月28日、私の「君が代」不起立戒告処分取消請求に対して請求棄却の不当判決を行いました。

 「大阪市国旗国歌条例下の初の処分取消裁判について新しい判断は?」「子どもの権利条約・国際人権自由権規約など国際法を根拠にした主張への判断は?」。判決は、これらの注目された部分への判断をすべて回避し、処分を容認したこれまでの最高裁判決等をつまみ食い的に貼り付けただけのものでした。

 私が主張した私の「君が代」不起立の理由をなかったものとすることで、この判決を導いたのです。無視された「君が代」不起立の理由は以下のとおりです。

 ―戦前、「天皇陛下のお治めになる御代(みよ)がいつまでも続きますように」という意味で政府が臣民に歌うことを強制し、天皇制支配の重要なツールとした「君が代」の歴史を隠したまま、再び強制によって式場の全員が起立・斉唱する場面を演出し、生徒に「日の丸・君が代」と日本国家を崇高なものと感じる心情を刷り込むことは、子どもの権利条約違反であり、憲法26条の教育を受ける権利の侵害である。職務命令に従って、自らが起立・斉唱することは、生徒への人権侵害に手を染めることと認識しているので、私にとって、不起立・不斉唱は「教員としての良心」に基づく行為である―

 最高裁をはじめとして重ねられ、11・28判決が引用した「『君が代』起立・斉唱は『慣例上の儀礼的所作』で、直ちに『思想・良心の自由』を制約するものではない」という虚構の判例と、「我が国と郷土を愛する意識の高揚」を目的として教員に「君が代」起立・斉唱を義務づけた大阪市国旗国歌条例下の現実の間には、隠しようのない乖離(かいり)があります。

 大阪市国旗国歌条例の下の教育長通知は「…教員が…自らも起立して国歌を斉唱することが教育の効果を高める大切な事項であることを教員に周知すること」と、教員の起立・斉唱を教育活動と位置づけています。ところが、判決は「原告が職務命令に従って起立・斉唱したとしても、それが生徒らにとって教育的指導と受け止められるとは言えない」とするなど、その矛盾は明らかです。

自由権規約委員会の総括所見を突きつける

 今回の判決を前にした11月3日には、国連の自由権規約委員会第7回日本審査最終所見が公表されました。そこでは、日本の「君が代」強制(「君が代」不起立処分)は国際人権自由権規約18条に抵触する人権侵害なので改めるように勧告されています。

 結審後でしたが、11月7日、第9準備書面として大阪地裁に勧告内容を伝えました。ところが、国連委員会所見をまったく無視したこの判決は、日本の司法の実態を国際社会に対して明らかにしたものといえ、今後、ずっと問題にされ続けることになるでしょう。

 私は、12月8日、大阪高裁に控訴状を提出しました。1月末をめどに、控訴理由書を提出し、控訴審に入ります。同様に闘っている東京のなかまをはじめとした粘り強い働きかけで実現した今回の勧告を、最大限生かして闘いたいと思っています。この自由権規約委員会総括所見の意味について学者意見書も出したいと今、準備中です。

 高裁での逆転勝訴をめざして闘います。今後ともご支援よろしくお願いします。



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