2023年01月20日 1756号

【パブリックコメントで原発全面推進への大転換に 反対の意思表示を】

 岸田内閣は12月22日、「脱炭素社会の実現に向けた基本方針」をまとめた。この中で、原発を「脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う」とし、次世代原発の開発を進め、廃炉する原発のリプレース(建て替え)を明記した。また、既存原発の運転期間について「原則40年、最長60年」の現行基準は残すとしながら、審査や裁判で停止した期間は運転期間から除外する新ルールを設け、実質的に運転期間を延長する方針を決めた。福島原発事故以来初めて、新増設を含む原発稼働を積極的にすすめる方向への大転換だ。

 政府は昨年末から1月下旬のわずか1か月、アリバイ的にパブリックコメントを4件募集している(原子力規制委員会・締め切り1/20/資源エネルギー庁同1/22/内閣官房ほか同1/22/原子力委員会同1/23)。

 岸田政権の全体方針といえる内閣官房ほかの「GX実現に向けた基本方針」は、「原子力などの最大限活用…2030年度電源構成に占める原子力比率20〜23%の確実な達成」を強調。徹底した批判の集中が必要だ。

 ここでは、とりわけ原発政策全般にかかる資源エネルギー庁「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を取り上げる。

 指針は「安全神話に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかった反省を忘れてはならない」と文言だけは記すが、福島原発事故から学ぶなら、今すぐ原発を停止し廃炉にすべきである。また、汚染水について「廃炉を着実に進める上で先送りできない課題」と、陸上保管など他の手段のまともな検討も行わず、海洋放出をあくまで正当化する。

 「帰還意向のある住民の方々は全員帰還できるよう」と、被ばくを強要する帰還政策推進も書かれている。「地域での実情を踏まえた支援の強化」では、避難計画の策定・充実にむけ「地域支援チーム」を創設するという。一方で「安全性が確認されなければ、運転できないことは大前提」とあり、「安全が大前提」としながらなぜ「避難計画の充実」なのか、全く矛盾する内容となっている。自然災害に弱い原発、MOX燃料の危険性、核ゴミの問題など都合の悪い点はほとんど触れられず、一見して批判すべきところが満載だ。

 何より、本来必要な全国での十分な公聴会など国民的議論をせず、ろくに周知もせず短期間のパブリックコメントだけで終わらせようとするのか。このように市民を無視し、命を軽視する原発推進への形だけの「合意」形成を絶対認めるわけにはいかない。

 ぜひとも一人でも多くの方が、原発推進への大転換反対の意見を記入してほしい。なお、資料や入力(郵送・メールも可能)宛先などは、「各省庁名/パブリックコメント」で検索を(表参照)。

(ZENKO関電前プロジェクト・秋野恭子)

パブリックコメント宛先、締め切りなど

(1)原子力規制委員会 「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」
締切:2023年1月21日0時0分

(2)資源エネルギー庁 「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」
締切:2023年1月22日23時59分

(3)内閣官房ほか 「GX実現に向けた基本方針(案)」
締切:2023年1月22日23時59分

(4)原子力委員会 「原子力利用に関する基本的考え方(案)」
締切:2023年1月23日18時0分

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