2023年02月03日 1758号

【すでに始動する大軍拡予算/琉球弧馬毛島で基地着工】

 軍拡予算が審議される国会開会を前に、琉球弧(南西諸島)の基地建設が急ピッチで進んでいる。日米両軍の対中最前線基地とされる琉球弧は環境破壊とともに、民主主義がブルドーザーでなぎ倒されていく。

異例のスピード

 琉球弧の北端に位置する鹿児島県西之表(にしのおもて)市馬毛島(まげしま)。東京ドーム170個分の広さ(8平方`b)の島がそっくり自衛隊基地に変貌する。沖縄・普天間基地の1・7倍だ。防衛省は1月12日、環境影響評価書の公告と同時に、基地建設に着工した。総額8000億円近くになる大規模工事を4年以内に終わらせるという。





 用意周到に準備された工事発注は、防衛省から委託された国土交通省九州地方整備局が行った。工事施工業者に設計段階から技術協力させるECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を採用したという。設計前に施工者を決めるとは、何のことはない、官製談合の言い換えに過ぎない。

 係留施設や滑走路など6件の工事は随意契約。五洋建設、鹿島、大成建設などのゼネコンと地元中堅業者が共同企業体を組み、請け負った。契約額は1680億円。他に種子島の業者9社に35億円を発注した。

 国交省が基地建設工事を発注するのは、「国力としての防衛力」を「平時から政府全体で備える」(有識者会議)ことの実践なのだ。自治体管理の空港・港湾など公共インフラを軍事用に再整備する役割を国交省は担っている。官僚組織も軍事優先で動き出している。

おざなり環境評価

 馬毛島基地(仮称)の建設工事は昨年夏から始まっていた。1年前の日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、馬毛島を硫黄島の米軍空母艦載機離発着訓練(FCLP)の移転「候補地」から「整備地」に引き上げた。2022年度当初予算に3183億円を計上した日本政府は、8月には馬毛島葉山港の浚渫(しゅんせつ)に着手。外周道路整備など本体工事の準備を着々と進めた。

 22年度補正予算で1441億円、23年度当初予算には3030億円(契約ベース)が計上されている。防衛省は23年度を「防衛力抜本的強化『元年』」としているが、すでに7600億円強の基地建設工事が動いているのだ。

 政府は大規模工事に義務付けられている環境影響評価を実質的に回避した。外周道路は基地施設とは別として、環境影響評価の対象から外す脱法行為を行った。しかも、主滑走路の長さ(図面では約2・8`b)を2・45`bといつわり、格下の第2種事業扱いとし、評価方法を簡略化するなどのごまかしを行った。

 辺野古新基地と同じように、最初から法を守る気などなかったのだ。市民にはまともに説明せず、平気でウソをつく。軍事施設はそうしないとできない代物だ。

容認した知事・市長

 馬毛島で基地建設が加速したのは、鹿児島県知事、西之表市長が相次いで基地容認に転じたからだった。

 塩田康一知事は昨年11月、県議会で容認を表明した。同年2月、岸信夫防衛相(当時)との会談後には、「説明がない」と不満を口にし、環境影響評価の準備書に夜間飛行頻度や絶滅が懸念される固有種マゲシカの調査などの意見をつけていた。だが、結局、あいまいな回答のまま基地を受け入れた。

 八板俊輔市長は、21年の市長選で「不容認」を掲げて当選した。1年後の2月、米軍再編交付金を受け取る意向を示し、基地受け入れへと態度を変えた。防衛省はこれを見定め、着工準備に動き出している。

 基地に反対する市民は昨年末、公約違反の市長をリコールしようと署名を集めたが、規定数に達しなかった。自治体の首長が交付金等の配分権を握る政府に反対を貫くのは相当の覚悟がいるのは確かだが、辺野古新基地建設工事を大幅に遅らせているのは、「諦めない」市民の闘いがあり、「反対」を貫く玉城デニー沖縄県知事がいるからである。

 米軍機だけでなく、自衛隊機も合わせ年間3万回にも及ぶ飛行訓練が想定される馬毛島。深夜3時まで続く訓練もある。対中国の日米共同作戦では、武器・弾薬などの集積拠点になる。軍事緊張を高める基地建設を直ちに中止せよ。馬毛島基地に反対する市民の闘いに連帯しよう。

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