2023年02月17日 1760号

【コラム見・聞・感/「車内閉じ込め10時間」生んだ/JR西のあきれた企業体質】

 10年に一度の大雪と言われる雪害が1月24日から26日にかけて全国を襲った。特に、大雪経験のあまりない関西地方ではJR西日本を中心に交通網が大混乱。東海道本線山科―高槻間で15本の列車が立ち往生し、約7千人が最長10時間近く車内に閉じ込められた。体調不良で16人が救急搬送された。

 多くの人が、関西中の鉄道が混乱し帰宅難民も続出していると想像したかもしれない。だがJR以外の私鉄では、立ち往生区間の南側を並行する京阪電車はもちろん、北側のより積雪の多い山沿いを並行する阪急電車でも大きな混乱は見られなかった。

 大雪で列車の発着ができなくなると、メディアでは「信号機故障」と報道されることがある。ポイントレールが雪や凍結で切り替えられなくなり、ポイントレールが開いていない線路の信号機が赤のまま変わらなくなるためである。

 ポイントの雪や氷を溶かす融雪器には電気式と燃焼式がある。電気式は電源を入れれば作動するため遠隔操作できるが、燃焼式はポイントレール直下に設置された灯油式のカンテラに係員が点火しなければならない。北陸などの豪雪地帯では、国鉄時代の1960年代くらいから電気式への置き換えが進んできた。

 私鉄の大半が電気式を導入しているのに対し、JRは燃焼式であることを理由に挙げる鉄道専門家もいる。だが、私鉄も一部、燃焼式が残る区間があるため必ずしも的確な論評ではない。

 JR西日本は、積雪予想が8abで融雪器を使用する社内基準の10abに満たなかったため使用指示を出さなかったと苦しい言い訳をしているが、カンテラに点火するだけの人員の余裕がなかったというのが表に出せない本当の理由だろう。「機械化し効率を上げるから大丈夫」だと言って人減らしを強行し、実際は機械化もせず放置、トラブルが起きてから「想定外」と言い訳をするJRのいつもの企業体質は健在のようだ。

 JR西日本は、2017年に起きた新幹線「のぞみ」台車亀裂事故でも、運転中止を決断できなかった背景に「確証バイアス」(列車運行に支障がないと思いたい心理)の存在を指摘されている(運輸安全委員会事故調査報告)。時代が進んでも肝心の「人」が成長しないのでは同じことがまた起きるだろう。

       (水樹平和)
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