2023年03月10日 1763号
【孤立死産事件で最高裁弁論開く/私は機械ではない 人間 女性だ/ベトナム人元技能実習生リンさんが訴える】
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双子を孤立死産したベトナム人元技能実習生レー ティ トゥイ リンさんが死体遺棄罪に問われている事件の上告審で最高裁は2月24日、弁論を開いた。リンさんを有罪とした二審の判決を見直す可能性が高い。
午後2時すぎ、最高裁南門には42席の傍聴券を求めて220人が列を作った。3時、第二小法廷で始まった弁論で弁護側は、遺体を段ボール箱に入れるなどの行為は「身の回りの品々で丁寧に行われた安置」であって、死者への宗教的感情を害する「隠匿」にはあたらず、二審の判断は「福祉により保護されるべき孤立死産直後の母親を、刑罰によってさらに孤立へ追い込むもので、著しく正義に反する」と無罪を主張した。
弁論後、衆院第一議員会館で行われた集会でリンさんは次のように語った。
――母親の愛情で箱にタオルを敷き、二人を寝かせ、手紙を書いた。寒くないようもう一つ箱を使い、棺のようにテープで止めた。
妊娠を誰にも言えず苦しむ技能実習生や一人で子どもを出産せざるを得ないすべての女性のためにも、無罪判決を願っている。
何度も苦しくて折れかけた心が皆さんの支援によって慰められ、励まされて希望を見出すことができた。
国会議員の皆さん、日本には誰にも相談できず、苦しみ悩む多くの技能実習生がいる。監理団体や実習先に妊娠を告げても中絶を求められたり帰国させられたりすることのないように、妊娠を隠さずに相談でき、安心して出産し、再び日本で働けるようにしてください。なぜなら、私や外国人技能実習生は働くだけの機械ではなく、人間であり女性であるからです。
妊娠した技能実習生や女性の苦しみを理解し、こうした女性を捕まえ刑罰を加えるのではなく、安心して出産できるような環境に保護される社会に変わってほしい。私の裁判をきっかけに、よりよい国になることを期待します。――
リンさんは最後に日本語で「きょうは皆さん、本当にありがとうございます」と述べ、会場を後にした。
広がる支援の力
刑事訴訟の最高裁への上告件数は2018年から5年間で1万件。うち弁論が開かれたのは16件、最高裁が破棄・自判無罪としたのはわずか2件にとどまる。針の穴を通すような困難な道をこじ開けてきたのは、全国に広がる支援の力だ。リンさんの裁判を支援する会の成毛(なるげ)佳季(よしき)さんが「手書き署名、ベトナム語のネット署名、韓国語署名、チェンジオルグ合わせて9万4704名の賛同をいただいた」と報告する。
移住者と連帯する全国ネットワークの鳥井一平さんは「目の前にいる外国籍の人びとと一緒によりよい共生社会を、女性が産むか産まないか自分で決定できる社会をつくろう」と呼びかけ、集会を締めくくった。
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