2023年03月24日 1765号
【画期的判決 関西生コン支部が逆転勝利/産別労組の団体交渉と認める】
|
大阪高裁(和田真裁判長)は3月6日、和歌山県広域生コンクリート協同組合(以下「広域協」)の実質的代表者M理事に対する強要未遂・威力業務妨害罪を問う刑事事件で、被告・全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部(以下「関生支部」)3人の組合員に対し、一審判決を破棄し、全員に無罪を言い渡した。
労働関係上の当事者
この事件は、生コン企業団体「広域協」のM理事が元暴力団員らを使って、産業別労働組合「関生支部」を威圧したことに対し、関生支部が謝罪を求めた要請行動が強要未遂や威力業務妨害罪にあたるとした刑事事件で、和歌山地裁は3人の被告全員に有罪判決を出していた。
大阪高裁は、この一審判決が元暴力団員らによる関生支部への威圧の不当性を過小評価し、元組合員Kの共謀証言に依拠して事実関係の認定を誤っていると指摘した。Kは関生支部組合員であったが、脱退し広域協に勤めるようになった。検察側の切り札となり、中央労働委員会でも証人として登場するなど、客観性が疑われる人物なのだ。
また、被告らが広域協の事務所を訪れることはMも事前に了解しており、Mは紛糾することを想定し面談に臨んでいたと考えられる。高裁は、一審判決が被告らの怒りから出た発言等をその原因から切り離して取り上げ不法と決めつけたことは、「事実経過を全体的かつ公平に評価せずに認定した」と強く批判。「著しく不合理で明らかな事実の誤認がある」とした。
高裁判決の特に重要な点は、「産業別労働組合である関生支部は、業界企業の経営者・使用者あるいはその団体と、労働関係上の当事者に当たるというべきだから、憲法28条の団結権等の保障を受け、これを守るための正当な行為は、違法性が阻却される(退けられ違法とされない)と解するべきである」としたことにある。
さらに、被害者とされたMのもとへ抗議・要請等に赴くことは、「それが暴力の行使を伴うなど不当な行為に及ぶものでない限り、労働組合が団結権を守ることを目的とした正当な行為」として、労働組合法1条2項の適用または類推適用を受けるというべきである」との判断を示したこともきわめて重要だ。
正された憲法28条解釈
一連の関生支部弾圧事件の裁判では、産業別労働組合の団体行動権については、企業内労組のそれより弱いとすることで実質的に否定されてきた。そうした歪曲された憲法28条認識が、関生支部の行動を正当な組合活動とはみなさない不当な判断につながっていた。
例えば「直接労使関係に立つ者の間の団体交渉に関係する行為でなくとも憲法28条の保障の対象に含まれる」としながら、「そこには自ずと限界がある。そのような団体行動を受ける者の権利・利益を不当に侵害することは許されないから、社会通念上相当と認められる限りにおいてその正当性が認められる」とした大阪ストライキ事件高裁判決や、今回の一審判決のように、「広域協に雇用される組合員がいない」として、労働組合活動とは認めず有罪判決の根拠にした。
今回、高裁は、証言の信用性等を丹念に検討して事実を再認定。産業別労働組合の特徴を踏まえた憲法28条について初めての判断を示したのだ。
弾圧はね返す力に
日本の戦前、敗戦直後は産業別労働組合が主流だった。企業別労働組合に特化させようとする企業側の策謀を排し、労働組合法に産業別労働組合の形態の余地を残させた経緯がある。
労働組合法第2条で、「労働組合」とは「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう」と規定される。これは、企業内・産業別・地域合同・ユニオンなどあらゆる形態の労働組合を包含し、等しく憲法28条の団結権・団体行動権の保障を受けることを定めたものだ。
現在、トラック運転手の全国平均年収は400万円前後(厚生労働省統計)だが、関生支部の組合員である生コン運転手の年収は同労組の闘いの中で約600万円。企業の外で賃金・労働条件を決める産業別労働組合運動への弾圧はグローバル資本の総意なのだ。
この勝利判決の意義は大きい。今も続く下級審での不当判決をことごとく打ち砕くためにも、上告断念を勝ち取らなければならない。
―――――
<憲法第28条> 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
<労働組合法第1条2項>刑法第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。
<刑法35条> 法令または正当な業務による行為は、罰しない。
 |
|