2023年11月03日 1795号

【みるよむ(670)/2023年10月14日配信:イラク平和テレビ局in Japan/良い生活環境を求める市民/弾圧するイラク政府】

 イラクでは、市民による自主的な地域の環境改善活動や自由な表現活動を政府が抑え込み、攻撃する事例が目立っている。2023年7月、サナテレビはこうした社会状況を取材した。

 現在のイラクは、社会サービスが極めて劣悪な状態で環境破壊も進んでいる。

 その中で、環境活動家などの若者が「そこはゴミ捨て場ではない、私の故郷なのだ」というキャンペーンを始めた。ティグリス川の清掃や、歩道、学校、壁のペンキ塗りなどで、地域をクリーンにする運動だ。自分たちの生活環境を良くしようという意欲と努力が伝わってくる。

 ところが、この運動を進めていたラリーさんに対し、何とイラクの治安機関が難癖をつけて弾圧をかけてきたのである。その口実は、20年前の独裁者サダム・フセイン元大統領が率いたバース党を「賛美している」というものだ。ラリーさんは芸術家で、サダム・フセインに似ているとされる別人の絵を描いたことが直接のきっかけのようだ。

 ラリーさんと弟は治安当局から暴行を受け、目の付近を殴られ痛々しい。

教員への恣意的な処分

 サナテレビは、もう一つの事例を報告している。ディカール州の学校の話だ。ある教員が停電で学校の冷房が効かない中、試験を受ける生徒たちのために段ボールを使ってあおいでいる場面がSNSで流された。これに対してディカール州教育省は「教員の地位を侮辱するものだ」として、その教員の処分を命じた。

 イラクでは、善意に満ちた地域のどのような活動であっても、政府による社会サービスの欠落を露呈させ、権力にとって目障りであると判断されれば治安当局が弾圧する。一方で政府は政治家の汚職や腐敗は野放しにしているのだ。

 サナテレビは市民の自由な活動を抑え込む社会を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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