2023年11月03日 1795号

【統一教会 解散命令請求/幕引きを狙う政府・自民/癒着の徹底解明が必要だ】

 政府は宗教法人法にもとづき、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令を東京地裁に請求した。これはカルト教団が行ってきた反社会的行為による被害の救済に向けた第一歩である。政府・自民党が望むような「幕引き」を許してはならない。

財産隠し阻止が焦点

 「解散命令」とは、裁判所の判断で宗教法人格を剥奪する制度のこと(宗教法人法第81条)。具体的には、(1)法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした(2)宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をした(3)代表役員が1年以上いない―などの要件がある。

 文科省は170人以上の被害者へのヒアリングや裁判資料を分析した結果、霊感商法や高額献金、正体を隠しての勧誘を統一教会の組織的な活動と認定。これらが解散要件の(1)と(2)に該当すると判断した。「宗教法人格が財産獲得の受け皿として機能し、法人格を付与した趣旨に反したことは明白」というわけだ。

 解散命令が確定すると、教団は法人格を失い、税制上の優遇措置や法人の財産はなくなる。ただし、布教などの宗教活動自体までは禁止されない。任意の宗教団体として存続し、活動を続けることは可能だ。

 裁判所での手続きは、全て非公開で審理が行われる。決定内容に不服があれば、高裁、最高裁まで争うことができる。審理の長期化で懸念されるのが、被害者救済の原資となるべき教団財産のゆくえだ。審理がされている間に、韓国の教団本部への送金などにより隠匿されるおそれがある。

 そこで被害者や弁護士たちは、解散請求がなされた宗教法人について、裁判所が財産を管理・保全できるようにする特別措置法の制定を求めている。統一教会の財産隠しを許さぬための法整備が臨時国会の焦点に浮上してきた。

自民の庇護で被害拡大

 文科省は解散命令請求の理由に、統一教会が40年以上に渡って「多くの人に多額の損害を被らせ、その親族を含む生活の平穏を害する行為」をくり返してきたことを挙げた。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、被害総額は判明分だけで1237億円。実態はその10倍と言われる。

 これほどまでの被害がなぜ放置されてきたのか。背景にあるのは、統一教会と自民党、とりわけ安倍派との蜜月関係である。岸信介元首相が「反共の先兵」として利用するために教団の日本進出を手助けして以来、両者は持ちつ持たれつの関係を築いてきた。

 教団側は自民党議員に私設秘書や選挙ボランティアを派遣するなど集票マシーンとしてフル稼働した。その見返りは議員個人に教団や関連団体の「広告塔」になってもらうこと、そして「政治の力」で霊感商法などに対する警察の捜査を抑えることであった。

 第二次安倍政権の発足で、統一教会と自民党の関係はピークを迎える。多くの議員が教団関連団体のイベントに公然と参加し、そうした議員が閣僚に多数起用された。安倍晋三首相は憲法「改正」という自身の政治的野心のために、市民に危害を及ぼすカルト教団と手を結んだのだ。

説明不十分が8割超

 その安倍元首相の銃撃事件を機に、統一教会と自民党の「ズブズブの関係」が表面化。世論の批判にさらされた自民党は教団との関係断絶を宣言した。だが、党本部は教団と国会議員の関係を自己申告で「点検」しただけである。議員秘書や地方議員の実態は何も調べていないのだ。

 しかも、議員本人の「関係を絶つ」との申告だけで政府や党の要職に起用している。現内閣では盛山正仁文科相を筆頭に大臣が4人。副大臣・政務官は26人で、全体54人の半数近い。次期衆院選の公認予定候補者には「統一教会汚染者」がずらりと顔を並べている

 安倍派の元会長として国政選挙で教団票を差配してきたと言われる細田博之前衆院議長に至っては、説明責任を果たさぬまま「体調不良」を理由に議長職を辞任。それでいて「議員としての活動はできる」として次期衆院選への出馬に意欲を見せている。

 今回の解散命令請求を受け、自民党内からは「幕引きに向けた大きな動きだ」との声が上がっている(10/13読売)。「誰が教団と関係を持っていたか、もう覚えている人はいない」と楽観視する声さえあるという(10/14北海道新聞)。

 市民を侮るな、と言いたい。毎日新聞の世論調査(10/14〜10/15実施)によると、自民党と統一教会の関係について「(党の)説明は不十分だ」は85%に上り、「十分に説明した」6%を大きく上回った。

 被害者の早期救済と同時に、政治と教団の癒着を徹底解明することを世論は求めているのである。(M)

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