2023年11月03日 1795号

【読書室/闘って正社員になった/東リ偽装請負争議6年の軌跡/東リ偽装請負争議原告・弁護団編 耕文社 1400円(税込1540円)/非正規労働者が切り拓いた展望】

 本書は、2017年3月に請負企業で働く5人の原告が請負先職場から排除され、2023年3月27日に請負先企業の正社員として就労を勝ち取るまで7年にわたる東リ偽装請負争議の報告である。本件は「労働契約申込みみなし制度」(派遣法第40条の6)を使って裁判闘争を経て正社員となった初の事例である。

 第1部は、組合結成・偽装請負告発に始まり、全員の職場復帰・直接雇用・正社員化までを、この闘争に専従した原告である全東リなかまユニオン有田昌弘さんが執筆。当事者としての想いと臨場感は圧巻。「私は労働者の権利向上・回復のために闘ってきたのではないことだけはハッキリさせておく。結果的にそうなったとしても。私の考えは別のところにあった」。何を求めて彼が闘ってきたか、ぜひ読んでいただきたい。

 第2部は、村田浩治弁護士、大西克彦弁護士による法律闘争と成果の報告である。兵庫労働局に対する偽装請負認定を求める闘い、組合員のみを排除した不当労働行為救済を求める兵庫県労働委員会・中央労働委員会闘争、労働契約の権利関係の確認を求める地裁・高裁での闘いについて法的解説が詳述されている。

 中でも、神戸地裁判決と大阪高裁判決を対比しながら解説される「偽装請負はどう認定されたか」の章は重要だ。現在、製造業における請負会社の労働者がこれを読めば、自らの働かされ方が偽装請負であることにすぐに気付くだろう。それほど偽装請負は日本中の製造業にまん延している。

 最後に、原告ら非正規労働者が早期に労働組合を結成していたことが勝利の最大の要因であることは強調しておきたい。  (T)
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