2023年11月10日 1796号

【つながって再開発に待った 住民が主人公の地域づくり 東京 北区・練馬区】

 東京・北区赤羽駅東口の再開発が計画されている。昭和の雰囲気を感じさせるビルや飲み屋街を潰して、タワーマンションを誘致する。防災や風紀の不安が理由だが、「もうけ優先」のまちづくりで、地域住民が長年親しんきた赤羽らしさ≠ェ失われる可能性が高まっている。それにあわせて、140年の歴史がある赤羽小学校、住民憩いの場である赤羽公園の再編まで浮上してきた。

住民合意なしはおかしい

 まちの景色が一変してしまう開発には絶対欠かせない地域住民との対話と合意形成。そこに疑問を感じた「やさしいまちをつくる会・北区」とそこから生まれた「住民本位の赤羽まちづくりを進める会」は、計画再考、特に小学校と公園を絶対守ろうと動いた。4月地方選の北区長候補・橋本弥寿子さんは「選挙で訴えた課題を継承していくために、そこでつくられたネットワークをまちづくり運動に活かしていきたい」と語る。

 区は、自治会や商店会の代表者等で構成される「赤羽駅東口地区まちづくり全体協議会」で住民の意見を聞く体裁をとってきた。そこで再開発計画を進める文書「まちづくり提案」を策定し、9月4日の協議会総会で採択する腹積もりだった。

 会に賛同する区議の働きかけで、ようやく自由参加の「まちづくり懇談会」が5月に開催された。しかし、「まちづくりコンサルタントらが会を進行し、反対意見を埋もれさせる、再開発ありきの会議」と橋本さんは憤る。

 2つの会は、総会前に住民の意見を真摯に聞く懇談会開催を求め区に要請。スタンディング、チラシ配布を繰り返し行い、市民自らが地域の対話と合意形成を草の根からつくろうとした。

 7月後半から3週間、署名活動も始めた。「再開発、小学校、公園の再編を知らない人が多かった。話すと驚いて署名してくれた」と橋本さんは手応えを感じた。

いよいよ採決の日

 約1600筆集め、区に提出。強固な市民運動の結束と対話を通した住民の意見を区に示したが、区は懇談会を開かない。「まちづくり提案」の採択へ向かって突っ走るらしい。

 総会での採決には、行政のやり方に不安を持った住民が意見を言うために結集した。岸本聡子杉並区長の言う「行政を動かせるのは、住民の声が横につながって集合的な力になるとき」が形となり、「まちづくり提案」は否決。

 デベロッパーら賛成派を動員しても、下からの民主主義は負けなかった。

 橋本さんは「小学校、公園を守れ≠ゥら開発優先政策ストップ≠ヨと意識が高まってきた」と住民の変化に期待する。最終的な判断は12月。会では住民がつくる「まちづくり宣言」と対案を提出する 。

平和なまちを求めて

 東京・練馬区には、陸上自衛隊の練馬駐屯地と埼玉県にまたがる朝霞駐屯地がある。「練馬区は軍事都市。有事の際は首都防衛の中枢になる。足元で反戦の声を上げなければ」と田川さん(仮名)は語る。住み慣れた地元も見つめ直すと、「緑豊かな練馬区≠ニいう清らかなイメージに覆われ、その危険な現実が見えていない区民が多い」と痛感した。

 昨年12月閣議決定された「安保三文書」の危険な動きを受け、「戦争しない・させない練馬の会」を結成し、国に反対の意見書を提出するよう、区に3月と6月、2度求めた。委員会で否決されたが、その過程で、他の運動体への訪問活動を精力的に行い、賛同を得た。「地域の動きや人の顔が見えるようになった」と運動のつながりの萌芽を捉えた。また、月1回の定点スタンディングを行い平和運動への参加も呼びかけた。

 市民監視のための「重要土地規制法」の区域指定が狙われている。田川さんは「指定1キロ圏内の住民の思想信条・個人財産がチェックされ人権が侵害される。この間一緒に活動した仲間とともに今度は、隣の北区・板橋区の運動とも連帯して人権を守る闘いを広めたい」と語った。

地域を変える闘い続く

 橋本さんは熱っぽく語る。「課題に向かって活動していると自然とつながりができてくる」。地域変革の闘いはまだまだ続く。



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