2023年11月10日 1796号

【みるよむ(671)/2023年10月21日配信/イラク平和テレビ局in Japan/高失業率の若者を狙い警察官増強 社会の軍事化が進むイラク】

 イラク政府は今、若者を対象に内務省の警察官の採用を急激に増やしている。市民のデモを武力で弾圧する警察の大増強は社会の軍事化を招く。2023年7月、サナテレビは問題の深刻な意味を明らかにした。

 イラクの内務省次官が「内務省への志願者が3万7100人になった」と発言する場面がある。ほとんどが警察官志望だという。イラク国民議会では3万7000人の警察官採用の予算が承認されている。

 この採用数は異常に多い。たとえば、イラクの産業や市民の生活の上でも重要で本来なら何千何万の雇用が必要な農業省への採用割り当ては1000人に過ぎない。異常な警察官増は、どう考えても社会サービスや市民生活の向上のための公務員採用ではない。

 しかも、警察官の採用年齢は、他の職種では禁止されている14歳以上までが含まれている。イラクは若者の失業率が極めて高く、安定した仕事を求める若者が多い。そうした事情から、内務省に就職するために高校を中退して応募する若者が続出することになり、「大変な社会問題だ」とサナテレビは指摘する。

 この内務省職員は多くが警察官であり、市民の要求や社会への不満を表明するデモを抑え込み弾圧する役割を果たしている。

民生部門の雇用こそ必要

 イラク政府とグローバル資本は、特に若者の失業者を大量に生み出す政策を取ってきた。政府は、その状況をいわば逆手にとり、利用している。社会生活に不可欠で若者にとって創造的な仕事となるべき民生部門の雇用が抑えられることで、市民を弾圧する側の警察官の募集に応じざるをえない若者が多数出ているのだ。

 失業と貧困の苦しみにつけこんだ支配のやり口には怒りがわく。サナテレビは、このような社会の軍事化、警察国家化に強く警鐘を鳴らしている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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