2023年11月10日 1796号

【全国民にツケを回すのか/大阪万博という壮大なムダ/万博は中止、カジノも不要】

 旧日本軍のインパール作戦と似てきた―。開催が危ぶまれている大阪・関西万博のことである。そもそも、万博のような時代遅れの一過性イベントに巨額の税金を投じるなんて壮大な無駄でしかない。維新の暴走を止めなければ、その被害は全国民に及ぶ。

AIが未来を予見?

 「大阪・関西万博は中止になったの?」「せやで。残念ながら中止になってしもたんや。大阪の人にとっては本当に残念やろなぁ」

 大阪府が提供する生成AIを活用した会話サービスが、こんな受け答えをしたことが話題になっている。このサービスは府がLINE公式アカウントで提供している「大ちゃんと話す」。柴犬のキャラクター大ちゃんと会話を楽しめるという触れ込みだ。

 府の担当者によると、相手の問いかけに合わせる設定上、「中止なの?」と聞けば否定せず「そうやで」などと答えてしまうのだそうだ。しかし「万博中止は残念ですか?」と聞いたところ、「せやけど、健康と安全が第一やから仕方ないねえ」と答えたらしい(10/18日刊ゲンダイ)。

 万博工事の労働者を残業規制の対象外とするよう求める意見が自民党議員などから出たことをAIは批判しているのか。それとも本当は生身の人間が答えているのか。いずれにせよ、地元大阪でも「万博はもうあかん」ムードが漂っていることは明らかだ。

 実際、万博関連のニュースと言えば、会場建設費の膨張や海外パビリオンの建設遅れ、そして維新と政府の責任の押しつけあいなど、「残念なお知らせ」のオンパレード。延期や中止を求める声が広がるのは当然のことである。

当初予算のほぼ倍

 万博の運営主体である万博協会は10月20日、会場建設費が500億円増えて最大2350億円になる見通しだと正式に発表した。当初計画(1250億円)の倍近い巨額修正が行われたことになる。

 この経費は国と府市、経済界が3分の1ずつ負担する。税負担がまた増えるということだ。それなのに万博協会は「責任と言われても、何をもっておっしゃるのか」(石毛博行事務総長)と開き直る始末。大阪維新の会の府議団は「増額分は国が負担すべき」と主張した。どこまで面の皮が厚い連中なのか。

 税金の追加投入はほかにもある。当初は入場料収入でまかなう計画だった会場警備費も国が200億円を負担するという。ちなみに、日本政府がパレスチナ自治区ガザへの緊急人道支援に出す費用は約15億円。どう考えても、カネの使い方を間違えている。

 海外パビリオンの建設遅れ問題は完全に行き詰まり、自前での建設は当初予定60か国の半分程度にとどまる可能性が出てきた。このままでは空き地が出来るとの懸念に対し、万博協会のある幹部は「(大阪発祥の)回転ずしのコーナーにすればいい」と言い放ったという(10/14朝日)。

 悪い冗談はやめてくれ。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる万博の売りが回転ずしでいいのか。7500円もする高い入場料を払ってまで行く値打ちはない。

目標も答えられず

 先日配信されたネット番組では、日本維新の会の藤田文武幹事長が実業家のひろゆき(西村博之)に詰められ、赤っ恥をかく一幕があった。「何をもって万博は成功したというのか」と問うひろゆきに、藤田は「経済効果だ」と明言した。しかし具体的な数値目標は答えられず、しどろもどろになったのである。

 ひろゆきは新自由主義の権化というべき人物だ。平和運動や社会変革の取り組みを冷笑する言動は犯罪的ですらある。だが、「何億というお金を使っているのに、成功の目標も決まっていないのか?」という疑問自体はまっとうなものだ。番組を見た人は維新のいい加減さに愕然としたのではないだろうか。

 あえて藤田をかばうとすれば、彼は本当のことが言えなかったのだろう。維新が万博の誘致に動いた理由、それは同じ場所(大阪湾に造成された人工島・夢洲)で開業をめざすカジノのためである。この地のインフラ整備に大金を注ぎ込むことを正当化するために万博を必要としたのだ。

  *  *  *

 「まあ、さんざん万博で叩かれていますよ。結構です。何回踏まれても僕は立ち上がります」。奈良県橿原市長選挙の応援に駆けつけた吉村洋文大阪府知事は街頭演説でこう語った。万博をめぐる批判を「不当なバッシング」だと言いたいらしい(市長選の結果は維新公認候補の敗北)。

 これが「維新の顔」の正体だ。全国の皆さん、だまされてはいけない。万博やカジノは大阪だけの問題ではないのである。 (M)

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