2023年11月17日 1797号

【誰もが見透かす増税かくし 岸田政権の「減税策」 必要なのは消費税減税・廃止】

 11月2日岸田内閣は「物価高対策・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定。記者会見で「所得減税」を強調した。だが、今必要なのは、増税批判をかわすためのピント外れの小手先減税などではなく、消費税減税・廃止だ。

日経新聞まで批判

 日本経済新聞社説(10/20)は「必要性にも一貫性にも欠けるバラマキの発想は改めるべき」と「岸田減税策」を批判する。狙いがよこしまなだけに、大企業と政府の広報紙といわれる日経新聞でさえ苦言を呈した。

 岸田政権は、減税後に軍事費大幅増のための増税を決めている。減税には軍拡増税を受け入れさせやすくしようとの思惑があるが、これも見透かされている。それは、過去最低26・9%(10/30ANA世論調査)などあらゆるメディアで内閣支持率が最低を更新していることに示されている。

 物価高に対して緊急に手を打たなければならない。一時的な所得税減税は焼石に水であり、消費税の減税・廃止こそが効果的である。

何のための税収増還元

 岸田首相は、所信表明演説(10/23)で「新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきた」と言い、コストカット経済(低物価・低賃金・低成長)から「持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済」への変革を強調。賃上げのための減税や投資減税などを提唱する。そして、税収増還元と続ける。

 ここには、これまでコストカット経済を進めてきた政策に対する見直しも反省もない。経済成長の可能性を強調し、「デフレ完全脱却のための緩和措置」として税収増還元=減税を語る。

 物価上昇率3%以上が1年続く状態はデフレとはいえない。この件について、岸田首相は、参院本会議(10/27)で「デフレではない状況が継続している」としながら「現時点では逆戻りする見込みがないと判断できる段階ではない」とあいまいに答えている。つまり、インフレになっていることを認めたくないのだ。

 ところが、一方で「物価高を乗り越える」ために還元すると言う。物価高が続く状態はインフレだ。実際は物価高に憤る世論の前に「インフレ対策」を取らざるを得ないにもかかわらず、「デフレ脱却のため」として所得税減税で需要を増やすとうたう。いったい何のための減税なのか不明のまま、チグハグのきわみだ。

 つまるところ、岸田減税策とは、「増税メガネ」の揶揄(やゆ)に象徴される増税イメージを薄めようとした選挙対策の意味しか持たない。

待ったなしの消費税減税

 市民生活の実態をみると、物価が継続的に上がり、物価上昇率3%以上が1年続いている(図1)。賃上げ率が物価上昇率を超えないため、実質賃金は17か月連続で減少している。インフレによって多くの人が貧しくなっている。

(クリックで拡大)

 今回の減税策では、本来の解決策である賃上げがされないまま購買力を高めるため、富裕層などを中心に需要が刺激され、さらなるインフレを招きかねない。また、増えた収入の一部は貯蓄に回ることから「景気対策」効果も限られる。企業サイドの試算(図2)も、所得税減税より消費税減税が2倍の効果を持つとする。



 物価が上がれば消費税が増え、税収増の主要因となっている。2022年度の消費税収は前年度から1・2兆円増で、消費税導入後、最も大幅な伸びとなった。庶民を直撃する物価高は実質上の増税である。したがって、消費税減税・廃止が物価高対策に有効だ。

 消費税は低所得層に大きな負担を強いている。この負担を軽減させれば実質的な収入増となる。消費税で苦しむ赤字の中小零細企業も助かる。ただ、消費税減税は富裕層にも多く恩恵をもたらすので、累進課税の強化や配当金課税の強化など不公平な税制の是正を一体で行うべきだ。

 消費税減税を求める声は大きくなっている。さらに強めよう。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS