2023年11月17日 1797号

【未来への責任(386)/大法院判決5年 被害者納得の解決を】

 「徴用工問題 なお火種」(10/29朝日)と報道された翌10月30日、2018年の韓国大法院判決から5年目を迎えた。

 当日、ソウルの大法院前では「韓日歴史正義平和行動」が記者会見を行い、「なぜ、大法院は強制動員の被害者が待ちこがれている現金化命令を下さないのか? 李春植(イチュンシク)、梁錦徳(ヤンクムドク)、二人の生存被害者が亡くなるのを待っているのか? なぜ2018年以降、係留中の強制動員訴訟の判決を下さないのか?」と訴えた。そして「歴史は被害者の人権回復を無視する最高裁の職務怠慢を『第2の司法壟断(ろうだん)』と記録するだろう」と宣告した。「壟断」とは「利益や権利を独り占めにすること」だ。

 強制動員被害者の訴訟代理人を務める林宰成(イムジェソン)弁護士は「最高裁が政治的に敏感な事案だとして判断しないのは、憲法の保障する迅速な裁判を受ける権利を侵害するもの」だと厳しく批判した。

 日本ではあまり理解されていないが、3月6日の韓国政府の「解決策」の対象は大法院で判決が確定した事件である。不二越など多くの事件がまだ大法院で判決が確定していない。また、判決が確定した15人の被害者・遺族のうち、第三者弁済による判決金を受け取ることを拒否している4人については、差し押さえた企業の韓国内にある資産の「現金化」の手続きがまだ係属中だが、大法院はこの事件についても全く動こうとしていない。

 かつて、2013年7月10日にソウル高等法院が李春植さんらについて、1人当たり1億ウォンの損害賠償を日本製鉄に対し命じたが、その上告審で大法院と当時の朴槿恵大統領は審理を意図的に保留していた事実が後に明らかになり、「司法壟断」と批判されていた。

 4人について韓国政府は、裁判所に被害者が受け取るべき判決金を供託しようとした。しかし裁判所は供託を「被害者の意思に反する」として受理しなかった。異議申立てもすべて棄却された。判決金を受け取った被害者からも企業からの謝罪を求める声が上がっている。人権を侵害し、敗訴した企業が何も責任を取らないということは到底許されるものではない。

 10月27日、日本では東京総行動で日本製鉄本社前抗議要請行動が取り組まれた。また、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」も声明「『解決策』では解決にならない!今こそ全ての被害者が納得する解決を!」を公表、外務省交渉と記者会見に取り組んだ。

 11月30日には国会内でシンポジウムも開催する。被害者の人権回復を置き去りにした政治決着は「解決」にならないことを日本政府・企業に声を大にして迫っていきたい。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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