2023年11月17日 1797号

【みるよむ(672)/2023年10月28日配信/同性愛は死刑や無期懲役?/犯罪化しようとするイラク議会】

 イラク国民議会では同性愛を犯罪化する議論が進められている。イラクの社会全体でも同性愛への攻撃が強まっている。2023年9月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 冒頭、イラク国民議会が売春防止法の改定について審議する場面がある。その改定案の中に、同性愛を犯罪とする提案が入っている。

 同性愛者をはじめとした性的マイノリティ―に対する偏見をなくし、差別を撤廃する取り組みが世界中で行われている。ところが現在のイラクでは、そのような世界の動きに全く逆行し、同性愛を犯罪としてしまう法律改定を押し進めている。

 改定案では、「同性愛の関係を持つ者は死刑または無期懲役に処される」可能性を認める条項が付け加えられる。さらに、同性愛を助長するだけで7年以上の禁固刑にするという。私たちが生きている現在の世界がいきなり数世紀、あるいはそれ以前に戻ってしまったような感覚を覚える。

「異常」表記を強要

 議会だけではなく、政府・行政機関も同性愛者への弾圧の一端を担っている。たとえば、メディア通信庁はすべてのメディアとソーシャル・メディア・ネットワークに対し、「同性愛」という用語を「異常」に置き換えるように指示した。政府自らが同性愛者に対する差別を公然と強め、助長しているのだ。

 NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは同性愛者を死刑にし、性転換の表現に禁固刑を科す法案の撤回を要求している。サナテレビが指摘するように、人権宣言や国際条約に完全に反するこうした基本的権利の蹂躙(じゅうりん)を許してはならない。

 イラクの議会や政府が同性愛を犯罪化する法律を制定しようとしているのは、イスラム支配を強めて市民を服従させるためだ。サナテレビは、このような差別と分断政策を許さず立ち上がろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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