2023年11月24日 1798号

【みるよむ(673)2023年11月11日配信:イラクの女性と労働市場】

 イラクでは、就労の機会を得ている女性はその人口の15%にすぎない。イラク政府は、女性が仕事を得て働き続けていくためのまともな対策を取っていない。2023年8月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 全人口の49%、約2000万人の女性のうち就業機会を持つのは15%。民間企業で働く女性の割合は全労働者の28%にすぎない。

 政治参画の面でも、2018年から2020年のマハディ政権では女性閣僚はゼロ、2020年から2022年のカディミ政権では1人だけである。政府の局長職は男性9人に対して女性は2人しかいない。

 イラクは女性の働く権利を保障する国際条約や女性に対するあらゆる差別を撤廃する条約を批准している。にもかかわらず、これが実態なのだ。

 それは国家予算の面にも表れている。離婚や夫を亡くした女性、家族を支える母親は貧困ライン以下で生活している。そうした厳しい生活を強いられている女性に対する予算の割合は「労働社会省の予算の3%を超えていない」という。

 「女性の失業問題や女性がさらされている暴力の問題に対する財政的な対策はない」とサナテレビは端的に批判している。

失業・低賃金政策の帰結

 番組は、女性を支援すべき国際機関の問題も挙げている。これらの団体は「単純な肉体労働を女性に教えることで満足している」のだ。語学教育やコンピューター教育など、女性が労働の機会を得ることに、より必要な取り組みこそが必要であると指摘している。

 イラク政府が女性の働く機会を保障しようとしないのは、グローバル資本と結びついて大量失業を作り出し、低賃金構造を温存する政策を進めているからだ。サナテレビは、就労の要求を突きつけて女性の働く権利を守ろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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