2024年01月05日 1804号

【2024年 民主主義的社会主義運動MDSはどう闘うか/佐藤和義委員長に聞く/人類の存続を危うくするグローバル資本主義/即時停戦が民主主義的社会主義への入口】

 2023年はどんな時代にあるのか。ウクライナでの戦争は泥沼化し、10月にはイスラエルがパレスチナのガザ地区に無差別攻撃を始めた。全世界で抗議行動が起こり、米国では自動車産業労働者が資本に勝利した。民主主義的社会主義をめざすMDS(民主主義的社会主義運動)は24年の闘いをどう進めるのか。佐藤和義委員長に聞いた(12月20日、まとめは編集部)。


今の時代をどうみるのか

 グローバル資本主義のでたらめさ、帝国主義の凶暴性が人類にとって限度に達している。グローバル資本のあくなき利潤追求の衝動を抑えなければ、人間社会が成り立たなくなる。そんな時代だ。

 イスラエルによるガザ地区での大量虐殺が象徴している。2万人を超える人びとを一方的に虐殺するなど許されることではない。イスラエル支援勢力の米国バイデン大統領でさえ、「国際社会の支持を失いつつある」と言っている。「やりすぎだ」と自制を求めるほどだ。

 全世界で批判が高まり、民衆の抗議行動が起こっている。即時停戦、パレスチナ国家承認により、解決を図るのが人類の任務である。

 なぜ、グローバル資本は戦争に突き進むのか。

 ウクライナ戦争をみればわかる。世界の軍事費は21年から22年に3・7%増、過去最高額2・24兆ドル(約300兆円)に達している。欧州全体では10%以上も増えた。世界中から資金を集め、軍需産業につぎ込んでいる。金が集まるところには汚職がはびこり腐敗していく。ゼレンスキー政権の国内支持率は低下している。



 東アジアでも、軍事同盟が強化されている。軍事演習が頻繁に行われ、軍拡が進められている。中国を軍事的に、政治的に、経済的に抑え込んでいこうとする。日本でも軍需産業を育成しようとしている。たとえば三菱重工。原発事業で失敗し、小型飛行機開発は頓挫した。そこを軍需で補おうというわけだ。

 つまり、膨れ上がったグローバル資本に高い利潤を保証するためには、なんでもしなければならない時代なのだ。戦争を継続し、戦争を拡大し、さらにまた搾取を強化することをやらなければならなくなっている。

 岸田政権の政策はその典型である。労働者の実質賃金は低下の一途である一方で、資本はどんどん利益を上げている。30年間も賃金を上げないなど、日本での搾取は異常な酷さだ。その上、できるかどうかも分からないリニア新幹線や辺野古新基地などに無駄金を使っていく。それが資本の利潤になっていく。

 自民党政権の「裏金」が問題になっているが、これもグローバル資本主義における支配階級の腐敗ぶりを示すものだ。グローバル資本は、政府と癒着することによって多大な利潤をあげている。自民党の政治家たちも支配階級の一員として分け前にあずかるのは当然だという感覚でいるのだ。

 米ソ冷戦の時代は資本主義は一定「抑制」していたが、今や全世界にわたって、米帝国主義を先頭としたグローバル資本があくなき利潤追求を行っている。そこには米国対中国、ロシアの対立だけでなく、新たに「グローバルサウス」諸国(南半球を中心とした新興国)が登場している。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は米国とも経済権益を争う勢力になっている。国連でイスラエル批判決議が採択されたのは、世界中に広がる抗議行動を背景に、これらの国が影響力を強めていることを示している。

 イデオロギーの違いによる米ソ冷戦とは違う構造だ。グローバル資本主義国間の市場争いといっていい。戦争・軍拡と搾取はグローバル資本主義の腐敗した姿として、全世界どこでも同じように現れる。


Q どのような闘いが必要か

 まず戦争をやめさせなければならない。パレスチナでの停戦を実現しなければならない。イスラエルへの批判は全世界で高まっている。イスラエルを孤立させている。パレスチナの労働組合が呼びかけて、イスラエルへの武器輸送を労働者が止めた。米国においてさえも青年層はイスラエルに反対している。ウクライナへの戦費支出が米議会で通過しないのも、米国内の反戦勢力の力の反映だ。

 東アジアでは沖縄の闘いだ。「台湾有事」を吹聴し、軍拡を進める日米韓に対して闘うことだ。11月23日の沖縄県民平和大集会の成功は大きな成果だ。これまで運動の側の弱かった点、青年層の決起をつくり出している。集会後の交流会で、全国から集まった運動団体がみんなそんな実感を持った。大きな展望だ。

 グローバル資本との闘いにおいて注目すべきは、全米自動車労働組合(UAW)の闘いだ。4年半で25%の賃上げや差別賃金体系の撤廃を勝ち取った。米国の主要産業において、資本に勝利した。指導部が変わり巧みな戦術を駆使し、連帯と支援が広がればこれほどの闘いができることを示した。



 日本を見れば分かるように、戦費への税の投入は、増税や社会保障切り捨てによって成り立っている。市民生活の悪化をともなって行われる。崩壊寸前の岸田政権を打倒し、政策の転換を実現していく必要がある。

 世界的に、資本の支配・抑圧にさらされていた青年層が闘いに決起していることは重要だ。日本の場合、資本の支配が特に強いために、青年層の運動への参加はハードルが高かった。沖縄のように、従来の運動がそれを自覚し、連帯を広げていく中で、資本からの解放を勝ち取っていける。

グローバル資本主義の対案は

 ソ連邦はじめ社会主義世界体制が崩壊して以降、グローバル資本が世界を市場として好き勝手に利潤追求してきたが、人類を滅ぼすかどうかの限度に来ている。資本が膨れ上がり、とめどない利潤追求が戦争を引き起こし、労働者搾取を強め、市民生活を悪化させていることは明らかだ。この資本の手を縛り、利潤追求をやめさせること抜きに、戦争は止まらないし、なくならない。

 その対案は社会主義である。戦争をやめさせ、搾取を規制し富を労働者が取り返し、市民のために使っていく政治体制を作りあげていくことだ。全米自動車労組の闘いは社会主義を掲げてはいないが、その道筋にある。資本の支配を打ち破っていく道だ。根源的な資本の衝動を止めなければ、戦争はなくならないし、搾取もなくならない。

 MDSは旧ソ連の官僚指令型社会主義ではない、民主主義に貫かれた社会主義を実現していくために闘っている。

 24年も引き続き、パレスチナ連帯の闘いを進める。ZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)をはじめ、日米韓の市民による連帯、国際連帯を強化していく。沖縄の闘いに連帯し、軍拡阻止、岸田政権を打倒し、政治変革を進める。

 今日の情勢において、なによりも戦争を止めること、これが民主主義的社会主義への入口となる。しかも緊急の課題だ。
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