2024年01月05日 1804号

【DSAニックのアメリカレポート/2023全国大会/DSAは強くなった/パレスチナ連帯を闘う】

 全米最大の社会主義団体DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)は2年に1度全国大会を開く。ニック・ワトキンスさんは、米北西部ワシントン州のDSAスノホミッシュ支部代議員として2023年大会に参加。その報告が寄せられた。

 DSAの最高意思決定機関である全国大会は、8月に開催された。全米の支部から選ばれた1000人以上の代議員がイリノイ州シカゴに集まり、今後2年間の組織の方向性について議論し投票を行った。

 最終的に、大会の主要なテーマは次の通りだった。(1)DSAの民主化と組織化(2)DSAと民主党との関係性、そして独立政党設立への方向性(3)パレスチナおよびBDS運動(イスラエル国家や企業のボイコット、投資引き上げ、制裁を求め、パレスチナの自由を求める運動)との連帯(4)トランスジェンダーの解放や人工中絶などの権利を求める全国レベルのキャンペーン実施。

DSAの民主化と組織

 DSAは過去7年間で大幅な成長を遂げ、全米で数千人という比較的小規模で影響力の少ない組織から、多くの議員を含む8万人を超える政治勢力に成長した。DSAは依然として私たちが目指す大衆的社会主義組織ではないが、41年の歴史上、規模と範囲ははるかに大きくなっている。

 一方、DSAの構造は会員数の増加に適応していない。そのためDSAの組織の再構築は、過去数回の大会で繰り返されてきたテーマでもあった。今大会でも、大きな再構築は行われずに閉幕したが、DSAの将来を形作ることを期待できるいくつかの改革があった。

 まず、大会は2人の常勤の有給共同議長を設置することを決議した。これにより、全国政治委員会から選出された2人のメンバーがフルタイムでDSAの責任を優先し、組織のスポークスマンとして機能することが可能になる。共同議長のポストの選挙は大会の数か月後に行われる。DSAはその史上初めて、組織から給与をうけ私たちを代表する2人のリーダーを民主的に選出した。同様に、大会は全国労働委員会に2名のフルタイム有給共同委員長を置くことを決議した。

 大会ではまた、世界中の左翼政党や政治組織を研究する任務を負う、民主的に選出された21名のメンバーによる「民主主義委員会」の設立も決議された。民主主義委員会はその結果を次の大会で発表する予定だ。この委員会は、今後、DSAの構造を改革するための基礎を築くのに役立つ。

DSAと民主党の関係

 DSAと民主党の関係も近年の全国大会で繰り返し取り上げられているテーマであり、長期戦略をめぐってはグループ(コーカス≠ニ呼ばれる)によって考え方は分かれている。

 DSA支部は主に民主党候補者の予備選挙で候補者を立ててきた。多くの州には反民主的な選挙法があり、二大政党以外の候補者が成功することはほぼ不可能だ。また現在は、選挙戦略としても、労働者階級に訴えかけ支持を得ることができるのは、独立候補としてではなく民主党候補としての方が効果的でもある。

 しかし、独立政党設立へ向かいたいという意思はDSAメンバーの中でも強い。その意思は大会によって裏付けられ、選挙に立候補するために民主党の路線を戦略的に利用しながら、独立した組織基盤を確立する措置を採用する方針が採択された。この中には、独立した有権者リストとツールの構築、候補者学校の設立、議員であるDSAメンバーと連絡を取り協力する委員会の創設と強化、より独立した民主的社会主義のブランドアイデンティティ≠フ構築などが含まれる。

パレスチナとBDS

 10月7日の攻撃後にイスラエルによる最近のガザ包囲が始まって以来、パレスチナ連帯はDSA全体の優先課題となっている。前回大会以前から、パレスチナ連帯は主要な焦点だった。

 大会では、DSAのBDSグループを国際委員会の小委員会として設置することが可決された。今大会以前は、BDSワーキング・グループは独立した機関として存在し、その機関の指導部と全国政治委員会との間に摩擦があった。大会以降、国際委員会は新しい小委員会のメンバーの妥当性を公表し、この重要な作業を主導する2人の共同委員長を発表した。

 この組織上の変更に加えて、大会ではパレスチナ連帯に対するDSAの選挙上の立場を強化することも決議された。これには、▽パレスチナ解放の大義を促進する法案を支持しパレスチナ人に害を及ぼす法案に反対するという誓約▽DSAの全国候補者支持アンケートにBDSに関する質問の追加を義務付けること▽候補者と選出された議員がイスラエル訪問や同政府関係者及びシオニスト団体との関係を持つことに注意すること―などが含まれる。

全国キャンペーン

 大会は、選挙年2024年に全国的なキャンペーンを開始することを決議。とりわけ、人工中絶など性と生殖に関する権利とトランスジェンダー解放のためのキャンペーンを確立する方針が承認された。

 2023年だけでトランスジェンダーの権利を攻撃する500以上の法案が各州議会で提出され、共和党は地方や全国で中絶禁止法制定を推進している。これらの問題は本質的に関連している。それは、働く人々の身体的自己決定権を制限しようとする極右の試みを反映している。

 大会では、DSAの優先事項であることを明確にし、民主的権利と身体の自由を擁護することで極右と闘うと決議した。大会後、全国政治委員会はこのキャンペーンを確立する作業をすでに開始し、全国の支部からキャンペーンを主導するメンバーを募集している。

 以上は、2023年DSA全国大会の焦点のほんの一部である。私たちの組織は依然として多くの課題に直面しているが、今大会を受けてDSAが組織としてより強くなったのは確かだ。これからも、民主的で平等な社会を目指し、誇りを持ってDSAメンバーとして活動を続けていく。

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