2024年01月05日 1804号

【税金を泥沼に注ぎ込むのか/大阪万博にみる無責任体制/民意の力でとめるしかない】

 巨額の費用負担が後出しでボロボロ出てくる大阪・関西万博。人びとの関心も低く、無理矢理開催しても失敗は確実と見られている。それでも万博を推進する維新の面々は「コスト以上の効果がある」(吉村洋文・大阪府知事)と強弁する。まさに詐欺師の言いぐさだ。

何が身を切る改革か

 12月8日の衆院予算委員会での出来事である。日本維新の会の馬場伸幸代表は看板政策に掲げる「身を切る改革」の“成果”を誇らしげに自慢した。「7年間のカット総額は6億4千万円に上っています」

 すかさずヤジが飛んだ。「万博3千億!」。維新こそ税金を無駄づかいしているというわけだ。ネットの反応をみても「万博にかけるお金と比べりゃ、維新の身を切る改革6億円なんて屁みたいなもんや」といったブーイングの嵐であった(12/13『女性自身』)。

 ちなみに「万博3千億」は会場建設費と運営費を合わせた金額のことと思われるが、大阪・関西万博の総事業費はこの程度では済まない。現時点における政府と大阪府・市の公式発表をみていこう。数字が並ぶが、ついてきてほしい。

夢洲ゆえのムダ経費

 12月9日、政府は大阪・関西万博の費用の全体像を公表した。万博に直接かかる費用は国費だけで1647億円。内訳は以下のとおりである。▽国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する会場建設費783億円▽日本館の整備費360億円▽途上国の出展支援240億円▽警備費199億円▽機運醸成費38億円▽誘致費用27億円―。

 これとは別に万博に関連して国や自治体、民間がインフラ整備に投じる費用が約9兆7千億円。直接関係するものに限っても8390億円に上る。その内訳は、会場となる人工島・夢洲と市街地を結ぶシャトルバスのルートとなる阪神高速「淀川左岸線」の2期整備事業など「会場へのアクセス向上費用」が7580億円、地下鉄の延伸など「会場周辺の整備費」が810億円とした。

 淀川左岸線2期の総工費は当初1162億円とされていたが、淀川沿いの土壌汚染や軟弱地盤への対応で約2957億円(負担割合は国55%、市45%)にふくらんだ。しかも難工事のため、完成するのは2032年度になる。万博期間中はシャトルバス専用の仮設道路で対応するという(整備費用約50億円)。

 地下鉄を夢洲まで伸ばす工事も、軟弱地盤や想定を上回る地盤沈下への対応などで費用が膨張した(約346億円。うち国負担88億円)。維新が夢洲での万博開催に固執した結果(その背景には同じ夢洲へのカジノIR招致がある)、莫大な公金が注ぎ込まれることになってしまった。

 大阪府・市の負担分はどうか。12月22日の発表では総額1377億円(会場建設費783億円、大阪独自パビリオンの建設費118億円、万博のPRにかかる機運醸成費20・5億円、子どもの無料招待費34億円など)となっている。

 発表分には万博に直接関係するインフラ整備費の府市負担分が含まれていない。夢洲の埋め立て費用も万博開催に合わせて施工を急いだために一般会計を充てた21億円分だけが計上された。維新の常套手段である数字いじりによって、コストを低く見せようとしていることは明らかだ。


運営費は赤字必至

 万博には会場運営や安全対策などの運営費がかかる。この費用も当初予定からふくらんで1160億円になる見通しだ。運営費は主にチケットや会場内の飲食店などの収入で賄われる。入場者数が想定を下回れば赤字に陥るおそれがあるということだ。

 チケットの販売目標は約2300万枚。開催期間が半年の万博で、達成できるとは思えない数字である。近隣の人気施設ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでさえ、年間の来場者は1200万人程度なのだ。

 しかも大阪・関西万博はとてつもなく不人気ときている。毎日新聞の全国世論調査(12/16〜12/17実施)によると、入場チケットを購入したいと思う人は10%にとどまった。「購入したいと思わない」は79%。維新支持層も7割強がそのように回答した。

 このように運営費を入場料などで回収できないことは確定的だ。それなのに自見英子万博担当相は「政府として赤字を補填することは考えていない」と公言。吉村府知事も「万博は国の事業で、府市が負担するわけがない」と主張した。さらには関西財界幹部も「これ以上はびた一文出せない」(10/21読売)と述べているという。

 あまりの無責任体制にあ然とする。連中に自浄作用はなく、無謀な計画は民意の力でとめるしかない。万博もカジノも市民には必要ないのである。  (M)

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