2024年01月19日 1805号

【柏崎刈羽原発の運転停止を解除/暴挙を証明した能登地震】

 岸田政権の原発回帰政策の下で、原子力規制委員会は規制機関としての責任を完全放棄した。その姿は、福島原発事故を起こした東京電力に対して確たる根拠もなく運転禁止命令を解除したことにもうかがえる。

お粗末すぎる点検

 新潟県柏崎刈羽原発では、他人の身分証明書を使って関係者以外が原発内部に侵入するなど「テロ対策不備」が相次ぎ見つかった。規制委は、改善が見られるまでの措置として、2021年に核燃料棒の移動を禁止する是正措置命令を出した。核燃料の原子炉への装填ができなくなる事実上の運転禁止を意味していた。

 規制委は、その後、検査官が身分を隠して「抜き打ち」で行う東電社員の行動確認を4千時間にわたって実施。その結果、東電の安全文化に改善が見られたとして、12月27日、是正措置命令を解除した。

 だが、規制委による点検の実態は、いたずらに時間を費やし「やってる感」を出すポーズに過ぎない。規制委のプレスリリースでは、点検内容は「安全啓発ポスターの張り出し」「安全に絶対はないという社長メッセージの共有」などという全くお粗末なものだ。

 福島第1原発の廃炉についても、規制委が東電に求めたのは「やりきる覚悟」というからあきれる。これで原発の安全が守られると考えるなら、大和魂≠ナ第2次大戦に勝とうとした旧日本軍と変わらない。

志賀原発に激震

 そんな楽観を根底から覆す巨大地震が、1月1日、北陸地方を襲った。柏崎刈羽原発のある柏崎市、刈羽村で震度5強。震源に近い志賀(しか)町では震度7を記録。北陸電力志賀原発でも強い揺れを観測した。

 岸田政権は、能登半島北部への交通路が絶たれ、現地調査もできない段階で早々と「異常なし」とうその発表をした。実際には1、2号機の変圧器で配管が破損。遅れて、3500gの油が建屋内に流出したと発表したが、これも5倍の2万gに「訂正」された。

 変圧器が壊れた影響で1、2号機は外部電源が使えなくなり、3号機からの外部電源でしのいでいる。北陸地方では、震度5弱以上に限っても15回の余震が起きている(1月7日11時現在)。今後の強い揺れで3号機の外部電源が絶たれれば、非常用ディーゼル発電機の燃料は7日分しかない。福島原発事故と同じ全電源喪失に陥りかねない。

 1、2号機では使用済み核燃料プールの冷却水計421gが床にあふれ、1号機のプールの冷却ポンプが一時停止した。今後の強い揺れでプールが破損すれば大規模な放射能漏れが起きる危険性もある。志賀原発は今も綱渡り状態だ。

 今回の地震では、揺れの強さの目安となる「最大加速度」2828ガルを志賀町で観測した。東日本大震災(11年)の2933ガルに匹敵するものだ。

 これに対し、北陸電力が志賀原発に適用している基準地震動はわずか600ガル。07年の新潟県中越沖地震後、柏崎刈羽原発の基準地震動は2280ガルに引き上げられたがこれをも大きく上回った。これだけの地震に耐えられる設計の原発は日本にはない。




日本で原発は無理

 規制委は、志賀原発1号機の直下を通る断層が活断層に当たるとした評価書案を16年4月に決定している。福島原発後の新規制基準では、重要施設は活断層の上に建ててはならず、志賀原発はこのまま廃炉になる可能性が高いと報じられた。

 だが、岸田政権が原発回帰へ向け圧力を強める中で、規制委は昨年3月、「活断層ではない」とする北陸電力の主張を丸のみし、16年評価書の内容を180度覆す不当決定を行った。

 今回の地震が志賀原発直下で起きたことは、16年評価書が科学的であり、正しかったことを証明した。規制委はでたらめだらけの決定を取り消し、同評価書に立ち戻る必要がある。

 政府の地震調査研究推進本部も、近い将来に南海トラフ地震が発生すると公式に指摘する。反原発運動の力で原発回帰路線を転換させなければならない。
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