2024年01月19日 1805号

【未来への責任(390) 再び賠償命じた韓国大法院】

 昨年末12月21日、韓国大法院(最高裁)は、三菱名古屋工場に動員された元女子勤労挺身隊員が三菱重工を訴えた裁判と日本製鉄に強制動員された元徴用工被害者が日本製鉄を訴えた裁判について、企業の上告を退け、会社に賠償を命じた。続く12月28日には、三菱重工と日立造船を訴えた裁判でも損害賠償を命じた高等法院の判決を確定させた。2018年以来5年ぶりの判決だ。

 今回の判決の意義は「時効」について18年の大法院判決が時効の起算点である、として日本企業の時効をめぐる主張を退けた点だ。つまり、18年大法院判決以前だけでなく、以後に訴えた裁判(約60件、原告数は230名余)についても今後時効で請求が棄却されることはないということだ。

 また、韓国政府の「第三者弁済」案を受け入れるかどうかを問われた、三菱重工を訴えた被害者遺族は「私は三菱と裁判したのだ」「とんでもない話」と一蹴したと報じられている。

 これらの判決について日本政府は「韓国政府が解決策に沿って対応していくと考えている」と述べたが、これからも被害者救済の判決が続くのは確実だ。財団が肩代わりする賠償金を受けとる原告が増えれば財団の資金では対応しきれなくなる。財団に第三者弁済させるというその場しのぎの韓国政府「解決策」は財政的にも破綻したと言える。

 日立造船については、初めて大法院で判決が確定した。判決を受けて日立造船は「日韓請求権協定およびこれに関する日本政府の見解ならびに当社主張に反するものであり極めて遺憾」とコメントした。しかし会社は、19年の高等法院判決時に強制執行(仮執行)を避けるために賠償金を供託していた。今回判決が確定したため原告代理人は供託金の受領を裁判所に請求するとしている。

 裁判所が請求を認めれば、間接的とはいえ日本企業の「資金」が被害者への賠償に充てられることになり、請求権は日韓請求権協定ですべて解決済とする日本政府の立場に反する事態が生じる。

 供託金が賠償に充てられた場合、日立造船や日本政府は請求権協定違反を理由に供託金(賠償金)の返還を求めるのであろうか。また現在進行している日本製鉄や三菱重工の強制執行手続きが確定し「現金化」された場合にも返還を求めるのであろうか。

 韓国で進行している一連の司法手続きは小手先の「第三者弁済」案では止められない。強制動員を行った日本企業が被害者に謝罪し、賠償あるいは賠償に代わる資金拠出など被害者が納得できる案を示さない限り、裁判をめぐる「火種」は尽きず真の解決にもならない。

(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)

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