2024年01月26日 1806号

【1806号主張/軍事費・万博 命の軽視/能登半島地震被災者支援を】

災害関連死対策急務

 能登半島地震は死者221人、避難者約2万人(1/14現在)と東日本大震災(2011年)以降で最大の被害をもたらした。避難者の95%は体育館などの避難所で生活せざるを得ず、救援物資も自治体職員も足りない状況にある。

 厳冬の中、災害関連死を防ぐことが重要になっている。16年の熊本地震では、死者276人のうち8割が災害関連死だった。冷暖房、風呂、間仕切りもなく、トイレも少ない学校の体育館という劣悪な環境が原因で、エコノミー症候群や持病の悪化などを引き起こした。

 今回も、同様の状況が報じられ、自主避難所の大半は仮設トイレすらない。

 政府は物資支援に47億円、道路や橋などの復旧工事で1000億円の支出を決めたのみで、極めて不十分だ。医療ケアや旅館借上げなど被災者の直接支援へ大規模な財政出動が今こそ必要だ。

国際基準を無視

 災害の度に繰り返し指摘される避難の課題の原因は、政府の災害対策、とりわけ避難所整備や運営を含めた対策を自治体と市民の「自助・共助」に押しつけてきたことにある。放射能除染作業や海上自衛隊輸送機(150億円)購入にも流用された東日本大震災復興予算(6年間31兆円)のうち被災者支援にあてられたのはわずか約2兆円で、被災者の手に届いた生活支援予算は約1兆円のみであった。

 避難者の命と人権をまもるための防災・救助対策にはカネを使わないのが歴代政権の政策だ。

 避難所が備えるべき国際基準(スフィア基準)がある。「トイレは女性用個室は男性用の3倍必要/避難所の一人当たりの覆いのあるスペースは3・5u(約2畳)分」など全世界の災害被災者および難民の人権を守るためには最低限必要な基準とされている。

 しかし、歴代政権は事実上、無視した。スフィア基準に基づくイタリアのような防災体制の必要性を問われた安倍首相(19年当時)は、「必要性は低い」と否定しているのだ。 

 避難生活も生活再建も自治体と市民の「自己責任」が原則という姿勢では災害関連死をなくせない。人権保護とは真逆の棄民政策だ。

防災対策こそ必要

 能登半島地震は、非火山地帯にも関わらず4bの地盤隆起という数千年に1回の現象まで起きた。いつどこで大規模な地震が起こっても不思議ではない。 

 地震に対処できるインフラ、避難所整備、備蓄、レスキュー隊の拡充など市民の命と人権を守る防災対策を政府が主体となって行なうことが必要だ。

 5年間で43兆円の軍事費や総額1兆円も費やし半年間の万博に血道をあげている時ではない。「災害対策・被災者支援にまわせ」の声を地域からつくりだそう。

 (1月15日)
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