2024年02月02日 1807号

【岸田2024年度政府予算案/大企業・富裕層優遇税制と/大軍拡をセットで推進】

 1月26日、通常国会が開会し、2024年度政府予算案審議が始まる。軍拡の一方で大企業・富裕層には減税。市民の願いとは真逆のその問題点を見ていこう。

拡大一途の国債費と軍拡

 予算編成に向け岸田政権は当初、膨張の一途の国債費や財政規模拡大への批判に対し、「歳出構造を平時に戻す」(「骨太の方針」)としていた。だが、閣議決定された24年度予算案は、予備費の4兆円減額などでお茶をにごし、自ら掲げた「平時に戻す」との決定も破ってしまった。

 予算案では、国債の利払い費の金利が1・1%から1・9%に引き上げられた。その結果、国債費は4年連続の増加となる。いずれはつけ払いとして生活関連予算削減の口実とされることは間違いない。6月から実施される定額減税に伴う地方交付税も増額となる。実質的な予算拡大だ。

 予算案に計上される国債の積算金利は実勢より高い。その差によって決算純剰余金を生み出し、7・9兆円もの軍事費の財源の一部に充てる。軍拡ありきなのだ。

 予算案閣議決定前の12月14日、与党は「税制改正大綱」を決定した。ここにはさまざまな減税策と大企業と富裕層への優遇策が盛り込まれた。岸田政権は「国債頼みの野放図な膨張」(東京新聞)予算案と「減税ずらり増税だんまり」(朝日新聞)で大企業と富裕層を優遇する税制改定をセットに、軍拡と税制改悪を進めようとしている。

徹底した大企業の税控除

 「戦略物資」を「経済成長」=グローバル資本の高収益のけん引役とするため、岸田政権はそれへの投資を進めようとしている。対象は、半導体、蓄電池(電気自動車など)、グリーンスチール(鉄鋼)、グリーンケミカル(基礎化学品)、SAF(航空機燃料)の5分野。その生産・販売量に応じた法人税の減税策として「戦略分野国内生産促進税制」創設が税制改正に盛り込まれた。たとえば、電気自動車1台に40万円が税額控除され、期間は10年だ。

 半導体は、産業の中枢を担い、家電製品やパソコンだけでなく軍事にも不可欠だ。昨年11月に成立した補正予算では、半導体への支援として約2兆円(既存基金の残高を含む)が充てられた。岸田政権は「30年までの10年間で半導体関連企業の売上高を3倍にし、15兆円超に押し上げる」との目標を掲げている。

 また、国内の研究・開発による特許や著作権、いわゆる知的財産についても法人税を7年間、30%減額することも導入する。このように大企業には多額な補助金に加えて減税まで行う、二重の優遇策が行われる。




富裕層減税さらに強化

 優遇策は富裕層に対してもある。それは、ストックオプション(株式購入権)税制の優遇拡大だ。ストックオプションとは、企業が従業員などに自社株を買える権利を与えることだ。大企業の幹部への報酬や「エリート人材」の確保を目的とする。無償で供与されるため、報酬と見なされて税法での給与とされる。

 ところが、この税制の要件を満たすものであれば給与課税が行われず、課せられるのは株の売却時の譲渡益課税となる。給与課税であれば最大で55%の税率となるところが、譲渡益課税なので約20%で済む。企業の株が上がるほどストックオプション保有者の利益が増えるのだ。

 これまでは一律に年1200万円が上限であったものが、税制改定によって最高年3600万円に引き上げられる。大々的に宣伝する市民への所得減税は1回だけだが、大企業幹部や一部のエリート層には継続した減税が行われるのだ。

 貧困と格差拡大が深刻化している今、本来であれば、異常なまでに蓄積を増やしている大企業や富裕層への優遇措置=不公平税制を廃止して増税へと切り替えるべきであるにもかかわらず、岸田政権は逆に優遇措置を強化しようとしている。

 大軍拡予算と大企業・富裕層優遇の税制改定をやめ、命と生活保障のための予算と税制への変革を迫ろう。



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