2024年02月02日 1807号

【読書室/平和に生きる権利は国境を超える パレスチナとアフガニスタンにかかわって/猫塚義夫・清末愛砂編著 あけび書房 1600円(税込1760円)/ただちに停戦、占領の終結を】

 猫塚義夫は2010年、「北海道パレスチナ医療奉仕団」を立ち上げた医師だ。清末愛砂は同奉仕団に参加する憲法学者で、アフガニスタン初のフェミニスト団体「アフガニスタン女性革命協会(RAWA)」との連帯活動にかかわり、現在「RAWAと連帯する会」共同代表を努める。

 本書は、両者の対談で、「10月7日のハマースの急襲とイスラエルの軍事行動をどうみるか」から始める。医師あるいは憲法研究者として、急襲による民間人への無差別攻撃は「いかなる言葉でも正当化できない」としつつ、背景である「パレスチナ難民とイスラエルの占領の歴史、ガザへの長期軍事封鎖、人道危機は10月7以前からずっと生じてきたこと」を指摘。逃げられない状況の中での無差別攻撃阻止と停戦を訴える。

 2人は、パレスチナで医療を通じた連帯活動を続けてきた。パレスチナに入ることだけでもさまざまな困難が待ち受ける。イスラエルは、16年間にわたってガザを世界最大の天井のない監獄≠フ状態にしてきた。さらに現在は、ガザ市民をそれ以上に過酷な民族浄化に追い込み、他国に追い出そうとしている。

 こうした状態に苦悩を表明しつつ、要求を提示する。「ガザ封鎖の即時解除」「パレスチナの被占領地全体では『オスロ合意の見直しを』『占領の終結を』」、そして、日本政府・企業が加担しないことである。

 また、彼らは北海道を拠点にし、名称にも北海道を明示する。そこには、アイヌ民族とパレスチナ人との共通性から植民地主義の不正義の問題を明らかにし、「歴史的反省に基づく連帯の必要性を考える」とする理由があるのだ。 (I)
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