2024年02月09日 1808号

【2024春闘/労基法破壊=働かせ放題狙う経団連/大幅賃上げ 人たるに値する生活を】

 1月16日、経団連は経営側の2024春闘の指針となる「24年版経営労働政策特別委員会報告」(報告)を発表した。また同日、「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」(提言)を発表した。

賃金抑制とリストラ

 報告は、昨年の賃上げが「30年ぶりの高い水準」であり、23年は「構造的な賃上げの実現に向けた起点・転換の年になった」と誇るが冗談ではない。日本は、実質賃金が30年間にわたって下がり続け、国際的に見ても異常な国になっている。昨年11月の実質賃金は前年度比3・0%減で20か月連続のマイナス。非正規労働者を際限なく拡大し、労働者の賃金を抑制し続けてきたことは一切反省しない。





 これ以上、非正規労働者、女性労働者、ケア労働者をはじめとするエッセンシャルワーカーの低賃金を放置させてはならない。24春闘では、過去30年間の実質賃金低下を取り戻す歴史的な大幅賃上げの実現を勝ち取らねばならない。

 報告には「構造的な賃上げ」という言葉が多用される。特に注釈もないが、これは昨年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」(いわゆる「骨太方針」)に由来する。そこでは、構造的賃上げとは、「リ・スキリング(技術再習得)」「職務給の導入(ジョブ型雇用)」「成長分野への労働移動の円滑化」を三位一体≠ノした労働市場の変更を通じて企業の生産性を向上させ、それによって達成される賃上げ、とする。

 労働者に「スキル向上」を強要し、一方でジョブ型雇用によって中高年層の賃金を抑制、労働移動によるリストラを遂行することで景気回復を図る、というのが資本のもくろみだ。

労働時間規制を攻撃

 報告は、「アウトプット(付加価値)の最大化」というテーマの一つに「労働時間法制における環境整備」を揚げた。「企業労使が積極的に話し合い、働き手の多様なニーズと自社の実態に応じた働き方が柔軟に選択できる仕組みを検討することが望ましい」と言う。提言には、狙いが露骨に表明されている。

 提言は、「働き方のニーズの多様化や企業を取り巻く環境変化などを踏まえ、時代にあった制度見直しの検討を不断に行うべき」などとする。その上で、「労使自治を重視/法制度はシンプルに」という基本的な視点のもと、(1)【過半数労働組合がある企業対象】労働時間規制のデロゲーション(法や規則の部分的撤廃または廃止)の範囲拡大(2)【過半数労働組合がない企業対象】労使協創協議制の創設などを求めている。

 つまり、提言は、資本が現在の労働基準法による労働者保護制度の規制緩和を正面から求めたものに他ならず、到底容認できない。

 「働き方のニーズの多様化」「労使自治を重視」などを口実にするが、それは労基法による保護からの逸脱・除外、適用の例外を大規模に拡大することである。実際、提言は具体的な効果として、(1)については「労働時間規制のデロゲーションの範囲を拡大」として、高度プロフェッショナル制度の対象業務についても労使の話し合いにより選択肢を拡大すること等も示している。(2)についても、「就業規則の合理性推定(不利益変更の労使合意による容認)や労働時間制度のデロゲーションを認めること」としている。

労基法逸脱を許すな

 労基法は、労働者が人たるに値する生活を営むため、雇用と労働条件の最低基準を保障するものである。特に労働時間規制については、労働者の生命・健康だけでなく、労働者の生活時間を保障するためのものであって、逸脱は認められない。

 個別合意はもとより集団的な労使合意によっても、労基法の最も重要な労働時間規制を大幅に緩和することは、資本による労働者働かせ放題に道を開き、強行法規としての労基法を破壊する危険な行為である。

 資本は、労働時間規制を実質撤廃することを通じ、労働者を酷使することでさらに最大の利潤を獲得しようとしている。今回の報告や提言はこの狙いを公然と明らかにした。24春闘の最重要課題の一つとして、闘いを強めなければならない。
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