2024年02月09日 1808号

【派閥解散、それがどうした/裏金問題をごまかす自民/企業・団体献金の全面禁止を】

 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件が岸田政権を揺るがしている。政府・自民党は派閥の解消に論点をすり替えようとしているが、実態は政治買収行為である企業・団体献金を禁止しない限り、「政治とカネ」の事件はなくならない。

抜け穴だらけ

 自民党が裏金作り事件などを受けた、党改革の「中間とりまとめ」を発表した。岸田文雄首相(党総裁)が本部長を務める「政治刷新本部」が通常国会の開会に合わせて作ったもので、派閥の解消や政治資金の透明性確立をうたっている。

 具体策としては、▽派閥を解消し「政策集団」に衣替え▽政策集団の政治資金パーティーは全面禁止▽政策集団の収支報告書への外部監査導入、などを盛り込んだ。一方、ザル法と言われる政治資金規正法については、改正の方針こそ掲げたものの具体的な内容には言及しなかった。

 多くのメディアが指摘しているように、抜け穴だらけの内容である。たとえば裏金作りの温床になった政治資金パーティーについてだが、「全面禁止」の対象は派閥単位のパーティーのみ。パーティーを派閥の幹部が開き、収入を他の議員に分配することは可能だ。

 それに派閥単位のパーティー収入がなくなっても、自民党全体からすれば大きなダメージではない。2022年分の政治資金収支報告書によると、自民6派閥のパーティー収入は計9億2千万円ほど。これに対し、国会議員の資金管理団体と関係する政党支部が開いた「特定パーティー」(1回の集金が1千万円以上)の収入は計52億円。その9割超を自民党議員が占めているのだ(12/1共同)。

 そもそも不正の根っこにある企業・団体からの資金提供をどうするのか。肝心かなめの問題を「中間とりまとめ」は完全にスルーしている。

パー券は隠れ献金

 1980年代後半から90年代にかけて、リクルート事件、佐川急便事件、ゼネコン汚職などが相次いで発覚。金権腐敗政治の元凶になっているとして、企業や業界団体から政治家への資金提供が問題視された。そこで政治資金規正法が改正され(1994年)、政治家個人に対する企業・団体献金は禁じられた。

 だが、政党本部や政治家が代表を務める政党支部は禁止対象とならず、抜け穴が残された。政治資金パーティーの開催も抜け穴の一つ。パーティー券の購入は寄付に当たらず、1回20万円を超える購入者以外は氏名などの公開義務がない。よって隠れ献金の手段として都合がよく、大いに活用されてきた。

 これは自民党だけの話ではない。「企業団体献金の禁止」を公約に掲げ、実際に受け取っていないことを売りにしている日本維新の会も、政治資金パーティーの開催を通して、企業や業界団体から事実上の献金を集めてきた。

 維新の母体というべき地域政党・大阪維新の会の例で言うと、毎年9月に「大阪維新の会懇親会」という名称の政治資金パーティーを行ってきた。パーティー収入は毎年9千万円を超え(収益率8割超)、同会の主要財源になっている。

 維新の馬場伸幸代表が「政治活動にはお金がかかる」として、政治資金パーティーの全面禁止に後ろ向きなのは、こうした台所事情があるからなのだ。

実態は政治買収

 「民主主義の維持にはコストがかかる。政党に企業の寄付(献金)をすることは一種の社会貢献だ」。経団連の十倉雅和会長は、企業による政治献金の目的を問われた際にこう述べた。本当に社会貢献なら各政党にまんべんなく献金してもよさそうなものだが、実態はそうではない。

 2022年分の政治資金収支報告書をみると、企業・団体献金の総額は約24億5千万で、このうち自民党が9割超の約22億7千万円を政治資金団体「国民政治協会」などで集めている。献金の実態が利益の還元を狙った政権与党の買収であることは明らかだ。

 一例をあげると、防衛省の契約実績上位企業10社が合計1億6千万円を超す献金を「国民政治協会」に対して行っている(2021年)。トップは「敵基地攻撃」に使用可能なミサイルや高速滑空弾などを納入した三菱重工業だった。

 マイナンバー制度の中核システムを内閣府から123億円で受注した企業(富士通、日立製作所、NEC、NTTデータ)も、8年間で計5億8千万円の献金を「国民政治協会」に対して行っている。まさに自社に都合のいい政策をカネで買ってきたのだ。

 「政治とカネ」問題の本丸は、パーティー券の購入を含む企業・団体献金の全面禁止である。これに踏み込まない限り、金権腐敗政治はなくならない。(M)

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