2024年02月09日 1808号

【読書室/イスラエル軍元兵士が語る非戦論/ダニー・ネフセタイ著 永尾俊彦構成 集英社新書 1000円(税込1100円)/武力で平和は実現できない】

 著者は1957年イスラエル生まれ。日本人の妻と埼玉県で木製家具の工房を営んでいる。少年時代は、イスラエルのパレスチナ占領拡大に何の疑問も持たずに過ごした。学校では繰り返しユダヤ人の苦難の歴史が語られ、建国のために犠牲となった人びとを英雄とたたえ、「国のために死ぬのはすばらしい」と教えられてきた。「平和は大切だ。そのためには力(抑止力)が必要」とする平和教育≠ェ軍隊への憧れを育て、彼はエリートとされる空軍パイロットをめざした。その夢は実現できなかったが、軍務を終えた時点では、イスラエルの占領政策に全くの疑問を持っていなかった。

 88年以降、日本に移住し、地元のダイオキシン汚染問題を追求する市民運動にも参加。差別問題にも関わるが、イスラエルの占領政策支持は変わらなかった。

 著者が非戦論に転じたきっかけは、2006年イスラエル軍のガザ侵攻で345人の子どもたちが犠牲になったことだ。「子どもたちを無差別虐殺する攻撃にいかなる正当性もない。支持するイスラエル国民は皆洗脳されている。自分も洗脳されていた」「差別問題、気候危機、飢餓問題と戦争の共通点は人権だ」「誰かの人権が奪われ、自分の人権が守られるということはあり得ない」と気づいた。

 彼は、「専守防衛」と言いながら「敵基地攻撃」を正当化し軍事力を増強している日本はイスラエルと同じだと指摘する。

 今、全国で反戦、脱原発、人権をテーマに講演活動をし、イスラエル本国へもSNSで反戦のメッセージを届け続けている。イスラエル国内でも大きく広がる市民の停戦を求める運動ともつながるものだ。 (N)
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