2024年02月09日 1808号

【福島原発かながわ訴訟控訴審/またも国の責任否定する不当判決/次世代のため認められない】

 原発事故で神奈川県に避難した61世帯168人が国と東京電力を訴えたかながわ訴訟控訴審判決が1月26日、東京高裁で言い渡された。判決文を書いた志田原信三裁判長は退官したため金子修裁判長が代読した。

 国の責任については、一審横浜地裁判決を覆して否定。昨年の6・17最高裁判決以降、司法は9件連続で国の責任を否定した。

 控訴審で原告は、869年の貞観(じょうがん)地震・津波の知見を基に対策をとれば原発事故は防げた、水密化も技術的には十分できたことを主張してきた。しかし、判決は「貞観地震に基づく津波試算の根拠となる知見は未成熟」と一蹴。推進本部の「長期評価」を取り上げて「津波の到来は想定した東側とは異なっていたため、対策していたとしても事故は防げなかった」と、最高裁判決の論理に従った。

 栗山博史弁護士は「貞観地震による堆積物調査で波源モデルを作り、津波の東側からの襲来も想定していた。万が一でも起こしてはならない原発事故。その時点におけるあらゆる知見を動員して対策に活かすのが規制の基本だが、それを無視する判決だった」と怒る。

区域外避難の正当認める

 損害賠償では、一審の約4億2千万円を上回る約4億5800万円の支払いを東電に命じた。原告の元居住区ごとの慰謝料額は、原子力災害賠償審査会の第5次追補の基準を超える金額を認め、区域外避難者については総額は低いが中間指針の賠償水準を引き上げた。小賀坂徹弁護士は「LNTモデル(閾値〈しきいち〉なしの直線)を採用して、予防原則の視点から、低線量の場からの避難も放射線の健康影響を避けるために避難するのは不合理ではないとした。かろうじて評価できる点だ」と語る。区域外避難者の避難の正当性を認め、賠償額にも反映させたのは成果だ。

 報告集会には全国の集団訴訟原告や弁護団をはじめ支援者ら200人が集った。判決直後の裁判所前では悔し涙で声を詰まらせた村田弘原告団長。「もう涙は出ない。そもそも第5次追補が出るまで10年も経ったのは行政の怠慢だ。司法までが崩れ、3権分立など成立していない。国は原発を推進する一方で、責任は取らなくてもいいと言う。こんな無茶苦茶なことは、次世代のためにも認められない」と語気を強めた。

 5月22日に結審を迎える京都訴訟からは4人が参加した。原告の福島敦子共同代表は「相手は裁判官を買収するくらいでやっているのだから、したたかに闘っていこう」と訴えた。

 
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