2024年02月16日 1809号

【2024年度 介護保険改定案/人手不足は解消せず、利用者は負担増/介護保険料引き下げは可能だ】

 2024年度からの第9期介護保険改定案では、介護現場や市民が反対していた、利用料の2割負担対象者の拡大、要介護1・2の介護保険外し、ケアプランの有料化などは見送られた。市民運動の成果だ。

 1月22日の厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会で、介護報酬改定を含む第9期の介護保険改定案が了承された。

 その主な改定事項を見てみよう。

訪問介護の報酬減

 第一は、介護報酬を1・59%引き上げることだ。内訳は、介護職員の処遇改善0・98%、その他0・62%。「介護職職員の処遇改善(24年6月施行)」の項目は「介護職場で働く方々にとって24年度2・5%(月約7500円)、25年度に2・0%(月6000円)のベースアップへと確実につながるよう加算率の引き上げを行う」と述べる。介護労働者の低賃金を改善する必要性を国も認識していることがわかる。

 しかし、全職種平均と比べて月額7万〜8万円も低い介護職員の賃金を抜本的に改善するには、ほど遠い引き上げ額だ。この額では、現在の慢性的な人手不足の解消も、40年に約69万人の増員を必要とするホームヘルパーの確保もできない。



 介護報酬の引き上げを賃上げの原資とすることは、利用料や介護保険料の引き上げにつながる。介護現場でより利用者に寄り添う存在となっている小規模事業所では、国の想定する賃上げもできないところが生じる。小規模事業所の人手不足は一層深刻になり、撤退する事業者も生じる。

 国の負担=財政出動で抜本的賃上げを保障することなしには、人手不足により介護保険制度そのものが破綻する事態は近い。

 第二に、利用者の負担増と訪問介護の報酬削減だ。

 老人保健施設などの相部屋の有料化(月額8000円)を実施する。また、「訪問介護はもうかっている」として、訪問介護報酬の引き下げを行う。具体的には、身体介護2・4%、生活援助2・2%の削減だ。

 儲かっているのは大規模な事業者で、小規模事業者はぎりぎりの経営状態だ。報酬の引き下げは利用者に寄り添う小規模事業者の経営を破綻させる。実際の訪問介護は比較的小規模事業者が多い。受け皿を減らすことで訪問介護利用を抑制し、要介護1・2の介護保険外しに道を開くことを狙っているのだ。

滋賀・大津市の成果

 市区町村の2月議会に保険料改定案が提案される。

 介護保険は、給付総額の25%を国、12・5%を都道府県、12・5%を市区町村が負担し、残り50%を40歳以上の市民の保険料で賄っている。65歳以上の1号被保険者が23%、40歳から65歳までの2号被保険者が27%を保険料として負担する。

 市区町村は、3年に1度、将来の給付見込み(介護サービス利用料)で赤字を出さないように高めに介護保険料を決めているため、自治体の介護保険特別会計は黒字だ。この黒字分を介護給付費準備基金に積み立て、次期改定時に介護保険会計に繰り入れる。

 滋賀県大津市では、3年間で1億円繰り入れると介護保険料を月30円引き下げることができるとの試算を当局が示した。

 介護保険料の全国平均は、00年の制度開始時の2911円から21年には6014円へと倍増した。国は、4月から介護保険料は全国平均で数百円上がると予測する。高齢者が増え介護保険利用者が増える中で、自治体は当たり前のように保険料を引き上げている。

 中川てつや大津市議の報告によれば、大津市当局は1月、55億円の介護給付費準備基金を使って24年度から介護保険料を引き下げることを明言した。署名など市民の運動と議員活動を結んで、全国に先駆けた画期的な成果が作りだされた。

 介護保険料の引き下げは可能なことを大津市の取り組みは示した。介護給付費準備基金の活用による保険料の引き下げや現状維持を首長、議員へ働きかけよう。大津市に続こう。
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