2024年02月16日 1809号

【みるよむ(683)/2024年2月3日配信/イラク市民蜂起4周年/―解決しない問題 蜂起の精神を継承するー】

 イラクでは2023年10月、19年10月に始まった市民蜂起から4周年を迎えた。この時、市民は腐敗した政府とイスラム政治勢力の暴力支配に抗議して立ち上がった。サナテレビはこの闘いを振り返り現在のイラクの状況を報告する。

 レポーターは「イラクの状況は変化していない」とまず指摘する。イラン・イスラム共和国と連携するシーア派のイスラム政治勢力が中心となって政権を握り、石油利権をはじめ汚職が依然として続いている。政府は反発する市民と世論を抑圧し続けている。

 バスラでは野党の活動家が治安部隊に襲撃され逮捕、連行されて行方不明となった。州議会選挙の候補者だったが、選挙管理委員会は選挙から除外してしまった。また、イラク議会では、同性愛を犯罪とする法律など「表現の自由に抵触する法律も多くが承認された」。政府を批判する市民を殺害した犯人への有罪判決を、上級の裁判所が覆す事態も起きている。

 「イラクの現状は10月市民蜂起が不条理なものではなく、イラク国民の苦しみの心から生まれたものであることを裏付ける」とレポーターは述べる。

 市民の当然の要求を弾圧と暴力で抑え込んできたのがイラク政府である。市民蜂起以来、政府の治安部隊の狙撃で数百人の市民の命が奪われている。

民主主義は形だけだ

 民主主義は形の上だけ残されているに過ぎない。基本的人権の抑圧、政治家らの腐敗、人びとの命と暮らしの破壊が進む。サナテレビは市民蜂起が提起したイラク社会の問題は解決していないと訴える。

 「10月は民衆の良心の明かりであり、平和的な変革が必要だ」「恐れおののく人びとは自由を創造しない」というスローガンが出てくる。サナテレビは、蜂起の精神を継承してイラク社会の民主な変革を進めることを呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS