2024年02月23日 1810号

【たんぽぽのように31 李真革/2024年 朝鮮半島の新たな情勢/かつてない戦争の危機に/平和のための連帯行動を】

 2024年、朝鮮民主主義人民共和国の新年の辞(党全員会議)と最高人民会議の波紋は非常に大きい。大韓民国はもちろん日本や米国などでも、朝鮮半島ですぐにでも戦争が起こりそうだという言論報道があふれる。朝鮮半島の戦争危機がさらに現実に迫ってきた。

 北の新年の辞などを通じて確認できる大きな変化は、次のような概念の転換だ。今まで使用してきた「核保有」「戦争抑制」「人民生活向上」「自力更生」「米国」「傀儡」「朝鮮半島の平和と統一」などの用語が「(核)戦争」「2つの国家関係」「第一敵対国」「米帝国」「社会主義強国」「領土完征」などに変わった。

 その核心には「大韓民国」を「第一敵対国」と規定したことがある。南北関係をもはや「同族」関係ではない2つの国家関係、さらには敵対的な交戦国関係に再確立したのだ。これに加え、「三千里錦水江山」「8千万キョレ(民族)」という表現や「統一」「和解」「同族」という概念自体を取り除かなければならない、とまでした。

民族観まで変更

 このような重要概念の変化によってこれを実践するための路線、方針、基調も明らかに変わった。

 大きく三つの変化が目立つ。第一は社会主義強国建設を必ず達成するということであり、次は南北関係を「統一を志向する特殊関係」から「交戦中で敵対的な大韓民国」に変えて「大韓民国」を「第一敵対国」と明らかにした点。三つ目は対米関係でも「米帝国」として性格を明確に規定し、米帝との対決でも必ず勝利し、反米・自主連帯を主導する国家として役割を果たすと明らかにしたのだ。

 これにより、中央の統一戦線運動組織としての「統一戦線部」「祖国平和統一委員会」はもちろん、下部の統一戦線運動組織である「汎民連(祖国統一汎民族連合)北側委員会」と「6・15共同宣言実践のための南北〈北南〉海外共同行事準備委員会の北側委員会」などを閉鎖し、その宣伝・扇動のためのメディアである「メアリ(響き)」「ウリ民族キリ(民族は一緒に)」なども直ちに閉鎖したことでその意志を明らかにした。

 実際に、汎民連南側委員会は今月の総会で解散を決定し、6・15南側委員会も解散を既定事実化したという。南側の統一運動陣営が感じているとまどいは、あちこちで確認できる。

 実にすさまじい。情勢観、戦争観、民族観を完全に新たにした。もしかすると76年前に戻ったと言わなければならないかも知れない。多くの専門家たちはこのような変化が突然ではなく、かなり長い不信の上でできたと評価する。何度か民主党政権ができ、南北対話が続いたが、南側の国防費が急増する中、大規模な韓米軍事訓練がなくならず、南側中心の吸収統一政策を放棄しないなどという南側の態度に北側が決断をしたとも言える。また、核と大陸間弾道ミサイルの開発に成功した自信も加わっただろう。

好戦で対抗する尹政権

 このような北の変化に南の尹錫悦(ユンソンニョル)政府関係者たちも同様に好戦的な用語で対抗している。かつて北がいくら過激な用語を使ったときにも「同族」や「統一」は変わらない大前提だったが、今や南と北は最大の敵になってしまった。地球の反対側で行われているロシアとウクライナの戦争に武器をそれぞれ供給している南と北は、今後どうなるのか。

 2024年になって、台湾の総統選挙があり、4月には韓国の総選挙がある。米国の大統領選挙も焦眉の関心事だ。戦争危機の中で自由な存在はあまりいないだろうこの24年の情勢だ。

 当たり前の話に過ぎないかもしれないが、今の対立が誰のためのものであるのかを常に問い直し、平和実現のための連帯行動を続ける以外にないだろう。

(筆者は市民活動家、京都在住)



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