2024年02月23日 1810号

【未来への責任(392)/朝鮮人強制動員追悼碑の代執行撤去】

 「群馬の森」公園に設置されていた朝鮮人強制動員の追悼碑「記憶 反省 そして友好」が1月29日からの県による行政代執行で撤去された。

 この碑は、群馬県議会が全会一致で趣旨に賛同し、2004年に「追悼碑を建てる会」が県の許可を得て設置したものだった。碑文に記載されているとおり「かつて我が国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する」ために建てられた碑であった。

 碑文は1995年の村山談話や98年の日韓パートナーシップ宣言で言及された「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」とする日本政府の歴史認識に合致するものだった。

 ところが、右翼団体が、碑文や碑の前で催された追悼行事での「強制連行」という発言が「反日的」であるとして県を執拗に攻撃したため、県は「政治的行事及び管理をしない」という許可条件に反する事態になったとして2014年に施設の使用許可を更新しなかった。

 そのため許可の更新を求めて提訴した裁判で群馬地裁は許可の更新を命じた。だが、東京高裁は「強制連行」という発言を行ったことにより追悼碑の中立性が失われたとして更新不許可を容認し、2022年には最高裁もこの判断を追認し、上告を棄却し更新不許可の判決を確定させた。

 そもそも朝鮮人強制連行は、侵略戦争遂行のための労働力不足を補うために日本政府が動員計画を立て、その計画に基づいて企業が朝鮮半島から集団募集・官斡旋・徴用の形態で強制的に約80万人に及ぶ朝鮮人を動員、強制労働に従事させ多大の犠牲をもたらした揺るがすことのできない歴史的事実である。

 また、行政代執行法第2条は「他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反する」場合にのみ代執行が許されるとする。右翼の攻撃以降、「守る会(旧建てる会)」は碑の前の集会を自粛し、碑は現在「政治的行事」の場でもない。施設の更新許可は裁判では認められなかったが、碑に何の問題もないのにもかかわらず県が強制的に撤去するのは法の趣旨に反する暴挙である。政府の歴史認識にも合致する追悼碑を強制的に撤去することこそ「公益」を損なうものである。

 今回の行政代執行は、歴史の事実に背を向け「強制連行はなかった」とする歴史否定論者らのヘイトスピーチやヘイトクライムに「お墨付き」を与える蛮行としか言いようがない。

(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)

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