2024年03月01日 1811号

【大津市が介護保険料を10%引き下げ/高齢者の負担軽減へ基金を活用/市民の運動で全国どこでも可能】

 滋賀県大津市は2月13日、2024年新年度予算案で介護保険料の1割引き下げを発表しました。4月からの保険料の改定を控え、全国の自治体の多くが保険料引き上げに動く中で、ほかの自治体にも影響を及ぼす大きな成果です。この実例が全国に波及していくことを期待します。
 大津市の発表によれば、市が積み立ててきた介護給付費準備基金55億円のうち37億円(各年度約12億2900万円)を投入し、4月から向こう3年間の第9期介護保険料を現行保険料額から10%引き下げるものです。標準保険料(第5段階)が6350円から5715円、年額7620円の引き下げとなります。 

 市の提案理由は「物価高は高齢者の暮らしに大きな負担を及ぼしていることから、介護給付費準備基金を活用し、保険料を引き下げ負担軽減を図る」で、市民の要望に応えたものです。


議会質問と請願の力

 2000年の介護保険制度開始以降、全国的には保険料は導入時の2倍を超え、大津市の保険料も第8期では当初の2・3倍となり全国平均額(6014円)よりも高い水準でした。

 市民からは「これ以上の値上げは耐えられない」との声が多く寄せられ、私が代表を務める「平和と市民自治の会」では、10月に介護保険学習会を行い、大津市長あての「介護保険料の値上げをせず、介護利用者の生活を守る要請署名」を開始。並行して11月市議会において、私は「本市の介護保険料を引き下げることについて」との一般質問を行いました。

 その中で、介護給付費準備基金について、「基金を活用することは少なくとも(保険料上昇)を抑制していくこと」「(第8期の数値で)1億円の活用で月額で約30円程度下がる」旨の答弁を引き出しました。

 さらに、市民団体から提出され、私と共産党議員団が紹介議員となった「基金を活用して介護保険料の引き下げを求める請願」が、保守会派をも含めた賛成多数で可決されたのです。これが決定打となり、1月の市長選で再選された現職候補の「介護保険料1割引き下げ」の公約となりました。広範な市民の声と運動に支えられた要求を無視できず、取り入れざるを得なかったことの表れです。

値下げ実例の意義

 大津市での保険料引き下げの意義は、第一に全国的の自治体の多くが値上げを行うと予想される中で10%という「値下げの実例」をつくった意味で、極めて大きいと考えます。

 第二に、厚生労働省が「足下の物価・賃金動向等を踏まえた余裕を持った保険料設定を検討」(2023年7月31日、全国介護保険担当課長会議)と半ば保険料引き上げを奨励する中で、大津市の事例は介護給付費準備基金の目的に沿った運用をさせたことです。

 第三に、提案理由で高齢者の暮らしの負担軽減≠上げており、自治体で保険料算定に当たって何より優先して勘案されるべき事柄を明示したと言えます。

 介護給付費準備基金の残高が少ない自治体でも、財政調整基金の取り崩しなどあらゆる方法を考慮し、一般財源から介護保険特別会計への繰り入れで対応するべきです。政府・厚労省は「制度の趣旨からして一般財源の繰り入れは慎むべき」と自治体に対し繰り入れを認めない不当な対応をしていますが、法律上は禁じる規定がなく、罰則・制裁もありません。昨年6月のZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)中央要請行動でも、厚労省に「繰り入れをしてはならない規定(法律)はない」と明言させています。

 本来的には、自治体当局が「市民の暮らしと命をまもる」立場に立てば、介護保険料の引き下げはどこでも実現できるはずです。大津市の事例を特殊な事例にとどめない、全国での運動がいっそう必要です。

(大津市議会議員 中川てつや)

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