2024年03月01日 1811号

【みるよむ(685)/2024年2月17日配信/イラクで広がる医薬品の密売/背景に公的医療の崩壊】

 イラクでは医薬品が不足し、価格が高騰している。2023年12月、サナテレビは深刻な医薬品の問題を取り上げた。

 サナテレビは、イラクでの医薬品の販売や取り引きが「患者を治療するためでなく、裏取引の場と闇市場になっている」と伝える。

 政府系医療機関では医薬品の密売が横行している。医薬品が大幅に不足し、薬品市場では高値で取り引きされている。特にがん治療薬は政府系病院でも大幅に不足している。抗がん剤は薬局や店舗での販売が禁止であるにもかかわらず、抗がん剤の注射1本が1000ドル(約15万円)で売られているのが実態だ。

 その中には使用期限が切れて何の効果もないものも含まれる。実際に、使用期限切れの医薬品が使われたためにがん患者が亡くなるという悲惨な事件まで起こっている。

 薬局で働く人が薬剤師でないことがある。医薬品と何の関係もない人の場合もある。薬剤師の証明書が業者に高値で売られ、薬剤師と業者が利益を分け合う構造になっている。

 さらに、政府系の病院から密売されている医薬品には麻薬もある。医師の処方箋がなければ使ってはならない危険な麻薬が出回っている。それが、欧米の一部では合法化されているマリファナ・タバコよりも安いというのだ。

70%が医薬密売品

 イラク政府は、医薬品の密売や麻薬の蔓延(まんえん)、業界の腐敗をまともに取り締まらない。密売医薬品が薬品市場の70%を占めるとの報道には慄然(りつぜん)とする。

 占領以来、イラクの歴代政権は社会サービス―公的医療を崩壊させてきた。そのために医薬品の密売や闇市場での麻薬取り引きなどが広がっている。サナテレビは、医療の民営化と公的医療崩壊が生み出した問題を取り上げ、市民のための医療の再建を訴える。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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