2024年03月01日 1811号

【沖縄に学び連帯 戦争を止め平和をつくる/ガマに入り基地に足を運ぶ/ZENKOユース平和参加団in沖縄】

 2月10〜12日、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は「ユース平和参加団in沖縄」を実施。高校生2人を含む10〜30代の若者メンバーを中心に13人が沖縄を訪れ、沖縄戦、辺野古新基地建設の現場、普天間・嘉手納基地などに学び、平和とは何かを考えた。参加した共同代表の田中拓真さん、河辺友洋さんに報告を寄せてもらった。

 1日目は南部戦跡をまわり、沖縄戦の実相を学びました。糸数アブチラガマ(自然壕)では、住民や軍人が戦火から逃れるため真っ暗なガマで過ごした数か月に思いをめぐらせました。命を落とした人も多くいましたが、滴り落ちる水滴や井戸などの「水」により命を永らえたことを知り、普段何気なく飲んでいる水の大切さを実感しました。

 南部の熊野鉱山は1年前に訪れた時から状況が一変していました。森が伐採され、山が崩され採石が行われています。沖縄戦で亡くなった人の遺骨が混じる土砂を再び戦争のための辺野古新基地建設に使うことなど、人道上絶対に許されることではありません。

 2日目、辺野古新基地建設の現場を訪れました。浜テントでは、ヘリ基地反対協議会の浦島悦子さんから辺野古での反対運動について説明を受けました。浦島さんもおばぁたちから「戦争の悲惨さは子や孫には体験させたくない」「海は命の恩人。それを基地に売るなんてとんでもない」と繰り返し聞かされてきました。その背中を見て現在も反対運動に立っています。また、ジュゴンが生きられない環境は私たちも生きられない、ジュゴンが生きられる環境を取り戻したい、と。この平和への思いを私たち若者が引き継いでいかなければならないと思いました。

 米軍キャンプ・シュワブゲート前では、辺野古弾薬庫の新増設工事、美謝(みじゃ)川の切り替え工事など、光景が全く変わっています。瀬嵩(せだけ)の浜から見ると、フロートに囲われ、土砂運搬船が停泊し、監視船が往来。辺野古代執行で1月10日以降、海中への石材投入など大浦湾側で埋め立て工事が強行されています。

 しかし、グラスボートで見た大浦湾は、青サンゴ、テーブルサンゴなどが棲息し、イソギンチャクにはクマノミが共生するなど生態系豊かな自然が残っています。この自然を守りたい―参加者共通の強い思いです。

戦場にさせてはならない

 最終日は普天間基地、嘉手納基地などを訪れました。米国防長官が世界一危険な基地≠ニ言った普天間基地は未だ返還期限すら示されていません。米軍ヘリ部品が落ちた普天間第二小学校は運動場のフェンスをはさんで基地に隣接しています。サッカーをしていた子どもたちのすぐ隣に基地があり、命を脅かしている状況が続いています。嘉手納町はその8割が嘉手納基地に占領されています。戦後79年も米軍基地が沖縄に集中する状況は変わっていません。

 自衛隊基地の強化も進んでいます。うるま市の陸自勝連分屯地ではミサイル配備が計画されています。

 沖縄県内の嘉手納、普天間、ホワイトビーチの3か所は国連軍基地でもあり、朝鮮半島で再び戦火が交われば、全県―全国が戦場となる危険性があります。

 沖縄戦や基地の実態を知ることで、戦争を防ぎ平和をつくるためには軍事力ではなく対話が重要、と参加者は実感しました。

     (田中拓真)

交流から平和の想い実現へ 次は私たちの番だ

 毎晩、参加者は感想交流会を持ち語り合った。

 1日目の交流会ではガマの中で感じたことを語り合った。初めてガマに入った高校生は「じめじめしていて、酸素が薄く息苦しく、冷たい感じ。それが何か月も続き苦しかったと思う。ガマから出た人は生きる希望があったから生きぬけたのだろう。私だったら諦めてしまう。命について考えることができた」とガマの中の人々を想像し皆が頷く。

 30代の青年は「ガマの中こそ戦争のリアルだ。政治家こそガマに入り、戦争を知るべきだ」と政府の言う「戦争」の空虚さを語った。

 2日目は「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の新垣邦雄さん、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」の神谷美由希さんを交え、これからの自分に何ができるかを出し合った。

 「平和のことを友達や周りの人とは話さない」「沖縄で綺麗な海が汚されようとしていることを全く知らなかったし、周りも知らないと思う」と日常で平和を考える機会が無いことが素直に語られた。だからこそ、「自分の周りから沖縄で学んだことを広げたい」「対話を通じて伝えたい」と皆が決意を語り出す。

 神谷さんは「SNSは大切なツール。私は対話を通じ海外との交流を重視している。対話をしていこう。私は沖縄の底力を信じている」と自らの活動や経験を踏まえ私たちを励ました。

 身体いっぱいに沖縄の自然の美しさも感じた。砂浜に絵を描き、貝殻をひろい、海に足を入れた。グラスボートからは自然界のバランスで保たれている大浦湾の豊かな珊瑚礁を覗いた。ふと顔を上げると、フェンスやブイという壁≠フ向こうで基地建設工事が行われていた。戦争を止めるのも、自然を守るのも、人間の責任だ。沖縄で学んだ平和への想いを実現していくこと。次は私たちの番だ。

      (河辺友洋)



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