2024年03月08日 1812号

【ウクライナ侵攻2年、ガザ封鎖から16年/戦争犯罪者に国際法を守らせる闘いを/全世界からより大きくより強く】

 ロシアのウクライナ侵攻は3年目に入った。イスラエルのガザ無差別殺戮開始から5か月、軍事封鎖からは17年目になる。国際法違反の行為、戦争犯罪をどうしたら止められるのか。国連決議や国際司法裁判所の判決・勧告に従わせる強制力は各国政府の行動にかかっている。その政府を動かすのは戦争を拒否する全世界の市民の力だ。

米国また拒否権

 ウクライナで、パレスチナ・ガザ地区で、戦争の犠牲者が日々増え続けている。「国際の平和と安全を維持する」ことを掲げる国際連合の本来果たすべき役割は発揮されていない。安全保障理事会は常任理事国の利害対立から何も決められない状態が続いている。

 2月20日の安保理も、ガザでの即時停戦提案に安保理15か国中、13か国が賛成したものの、英国は棄権、米国の拒否権行使により否決された。だが、国連発足当時、加盟国は57だったものが現在193か国になり、大国の思い通りにはいかなくなっているのも事実だ。

 国連総会は昨年2月、ウクライナ戦争1年に合わせた緊急特別会合で、ロシア軍の撤退・戦闘停止などを求める決議を141か国の賛成で採択した(今年は、賛成国が減少することを恐れウクライナが決議案提出を見送った)。

 ガザでの即時人道的停戦や民間人保護、人質無条件解放などを求める決議は153か国が賛成した(パレスチナを国家承認している138か国より多数)。

 2度にわたる「世界戦争」の悲惨な経験から、数々の国際法(国際人道法やジェノサイド条約など)が生まれてきた。それを守らせることができなければ悲劇はさらに繰り返される。政治指導者をルールに従わせるには、市民の力が必要だ。

良心的兵役拒否

 ロシアでは、3月の大統領選挙を控え、戦争反対を掲げた候補者の受け付けが無効とされるなど、プーチン大統領批判を抑えこむ動きが強まっている。

 そんな中で「プーチ・ダモイ」(ロシア語で「家路」)と呼ばれる運動が広がっている。昨年8月開設された情報チャンネル「プーチ・ダモイ」。ウクライナに送られた兵士の早期帰還を求める署名が呼びかけられた。今では毎週「夫を返せ」「息子を戻せ」と妻や母親が集会やデモ行進で訴えているのだ(2/12言論プラットファーム「アゴラ」)。

 ロシアでは今年1月、18歳からの徴兵年齢の上限が27歳から30歳に引き上げられたが、徴兵期間1年はそのままだ。ところが「動員以来、500日過ぎたが、夫は帰ってこない」との声がある。期間を超えた兵役を強いられているのだ。ますます、帰還を求める声は大きくなるだろう。

 一方のウクライナでも、徴兵拒否者が増えている。「2年前は国を守るために志願する人びとはいた。今、妻と子どもを守るために、戦場には行かない」といった声が報道されるようになった(2/21毎日新聞)。独立広場では毎週のように兵役につく夫や息子の帰還を求める女性たちの抗議行動が行われている(2/21NHKクローズアップ現代)。

 良心的兵役拒否の闘いを支援するウクライナ平和主義運動によれば、徴兵忌避、脱走などの刑事訴訟件数が急増、23年1月から9月までに1万9千件にのぼった。

 ゼレンスキー大統領は昨年12月、あらたに50万人の追加徴兵を明らかにし、議会は兵役義務者の個人情報を電子化するなどの動員法案を審議中だ。召集令状がもれなく届くようにする狙いだ。だが良心的兵役拒否は人権である。戦争中であっても侵してはならない権利だ。前線に送ったり、懲罰を課してはならないのだ。

 ウクライナ平和主義運動の事務局長ユリ―・シェリアジェンコさんは、「ロシア侵略を正当化した」とのでっちあげ理由で拘束されているが、良心的兵役拒否の闘いの中心的な役割を果たしている。

 兵士がいなければ戦争はできない。戦争を止める大きな力だ。




戦争に手を貸すな

 世界的にも、多くの市民が戦争をやめろと行動に立ち上がっている。ウクライナ戦争2周年となる2月24日は国際反戦行動デーだった。

 米国では、カリフォルニア州にあるトラビス空軍基地の封鎖行動が取り組まれた。昨年12月28日と2月7日に続く3回目の行動だ。主催団体の一つ女性平和団体コードピンクは「米議会がガザでの虐殺、ウクライナでの永遠の戦争、中国に対する敵対行為の激化などを進めるための軍拡予算案を可決しようとしている中、軍国主義と圧制に対し団結しよう」と訴えている。

 米国は、ウクライナ戦争でもガザ攻撃においても、戦争当事者と言って過言ではない。23日には、ニューヨークでイスラエル擁護団体「米イスラエル広報委員会」(AIPAC)の事務所に対する抗議行動があった。国連安保理停戦決議を妨害したことへの抗議だ。

 安保理停戦決議を棄権した英国でも24日、ロンドンをはじめ各地で「即時停戦、ガザ虐殺を止めよう」と集会やデモが取り組まれた。17日には、ガザ南部の「最後の避難場所」となっているラファへの攻撃が公言される中、英国をはじめ世界45か国で「ラファに手を出すな」と行動が取り組まれている。

 イスラエルとの協力関係を打ち切らせるBDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動も、日本でイスラエル軍事産業との業務提携を打ち切らせるなど世界的規模で市民の力を発揮している。



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 ゼレンスキー大統領はハマス(イスラム抵抗運動)の攻撃直後に「イスラエルの自衛権は疑う余地がない」とイスラエル支持を表明した。欧米からの軍事支援に依存するゼレンスキーは、「軍国主義者」(ユリ―事務局長)の姿をさらしたのだ。これ以上市民を犠牲にするな。即時停戦・交渉で解決を。武力によらない紛争解決を実現する圧倒的な市民の力を示そう。

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