2024年03月15日 1813号

【みるよむ(687)/2024年3月2日配信/イラク・ディナールの大幅下落/利権のために通貨安定破壊】

 最近、イラクの通貨ディナールの対ドル交換レートが大幅に下落し、市民の生活に打撃を与えている。2023年12月、サナテレビはこの問題を報道した。

 イラクでは、長年ドルの国外逃避の危機が続いたこともあったが、その影響は大きくはなく、特にシナン・アル・シャビーブがイラク中央銀行総裁の時は、ディナールの対ドル為替レートは安定していた。インフレ率も低下した。

 ところがマリキ首相(06〜14年)の時代に状況が一転した。シャビーブは解任され、中央銀行総裁をはじめ金融監督局長、マネーロンダリング局長、法務銀行局長、経済局長などの幹部が一斉に支配層の利権獲得に都合の良いように首をすげかえられた。シャビーブはこれに同意しなかったので追放され、ついには逮捕された。彼は後に失意のうちに死去したという。

 マリキ首相が中央銀行総裁に任命したのはアル・アラーク。その下で中央銀行の建物に雨水が流入し70億ディナールが損傷するというずさんな事件まで起きた。

 次に中央銀行総裁に任命されたムスタファ・ガリブの下では、ディナールの為替価値が変動し、闇市場との価格差を利用して金融ブローカーらが近隣諸国に密売し、大儲けした。

ここにも腐敗の表れ

 そして、現在のスダーニ首相は、汚職との関連が疑われているアラークを中央銀行総裁に再び任命した。

 一国の中央銀行総裁が、政党や支配者の利害で決められているのだ。腐敗した政治の実態がここでもあらわになっている。

 通貨ディナールの下落を利用して、権力者や資本家は利権をむさぼっている。そのことで輸入品価格が上昇し物価が上がり、市民は生活に苦しんでいる。

 サナテレビは、このような不当な為替政策を進めるイラクの政治を変えようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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