2024年03月15日 1813号

【イスラエル製無人攻撃機が沖縄に/防衛省が大量配備を狙う/ジェノサイドに加担する暴挙】

 防衛省が攻撃型ドローン(無人航空機)の大量配備を急いでいる。「台湾有事」における自衛隊と中国軍との戦闘を想定し、琉球弧(南西諸島)を中心に配備する計画だ。どこから調達するのか。例によって米国で決まりか。違う。本命はイスラエルなのだ。

本命はイスラエル

 政府は新たな「防衛力整備計画」の初年度にあたる2023年度予算を「防衛力抜本的強化の元年予算」と位置づけ、7つの重点分野を掲げた。その1つに「無人アセット防衛能力の向上」がある。アセットとはわかりにくいが、要するに無人兵器のことだ。

 23年度予算では、攻撃型の無人機として、ミサイルを積める多用途・攻撃用ドローンや小型攻撃用(自爆型)ドローンの運用実証に99億円を計上した。その対象となる機種が1月に選定されたことがわかった。

 小型攻撃用は▽エルビット・システムズ社(イスラエル)のスカイストライカー▽イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社(IAI)のロテム・ライト▽同じくポイント・ブランク▽Uビジョン社(イスラエル)のHERO―120▽ディフェンドテックス社(オーストラリア)のドローン81―の5機種。多用途・攻撃用は▽IAIのヘロン▽スバル(日本)のVTOLの2機種。つまり、防衛省が候補に選んだ7機種のうち5機種がイスラエルの大手軍事企業が開発した兵器なのだ。

 イスラエルは世界最先端の無人兵器大国である。世界で売買される軍事用ドローンの60%がイスラエル製と言われ、米国を抜いて世界一の輸出国となった。圧倒的な競争力の理由は「実戦による性能保証」。兵器の実力はパレスチナ自治区等への軍事攻撃で証明済みというわけだ。

 たとえば、市街戦に特化した自爆型ドローンなんてものもある(エルビット社のラニウス等)。建物内など入り組んだ場所に侵入し、標的を背後から襲って殺傷することが可能という。これなどはガザ地区の住民を実験台にして開発された兵器の典型と言えよう。

自爆型ドローン

 今回、防衛省が選んだ小型攻撃用の候補機は自爆型のドローンだ。爆薬を搭載したドローンが数時間にわたって目標地域上空を徘徊し、攻撃目標を発見するか、地上管制システムからの指令を受けることにより目標に突入して爆発する。「徘徊爆薬」とも呼ばれるゆえんである。

 機種ごとに特徴をざっと見ておこう。スカイストライカーは完全自律型の小型ドローンで、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャン軍が使って戦果を上げた(敵の防空システムを無力化した)ことで有名になった。

 ロテム・ライトは数秒で組み立てられ、兵士1人でも操作が可能。ポイント・ブランクも「バックパックで携行できる」が売り。専用の発射装置を必要とせず、人の手から直接、空中に放つことができる。HERO―120は米海兵隊が導入を決めた。水陸両用の歩兵戦闘車や開発中の無人水上艦にも搭載される。

 共通の特徴は、小型・軽量で機動性・操作性に優れていること。持ち運びが容易で、どのような場所からでも簡単に飛ばすことができる――そうした攻撃型無人機を、自衛隊はどのような事態を想定して導入しようとしているのか。

分散型戦闘に必須

 「攻撃型無人機、自衛隊に試験導入へ/島しょ防衛強化へ25年度以降に本格配備」。読売新聞がこんな見出しの記事を掲載したのは、安保3文書が改定される約3か月前の2022年9月14日のことだった。

 記事の内容は「有事の際、島に近づく敵の艦艇や上陸を試みる敵の部隊への攻撃に使うことを想定」して、「南西諸島を中心に配備する計画」を立てていることを「複数の政府関係者」が明らかにしたというもの。イスラエル製や米国製の自爆型ドローンを試験導入するとも書いている。

 3文書の改定に向けて政府がリークした記事であり、内容はかなり正確だ。ただし「島しょ防衛」や「抑止力強化」という表現を鵜呑みにしてはならない。政府の想定は「台湾有事」の際の日米共同作戦だ。琉球弧(南西諸島)を舞台とした中国との戦争のために、攻撃型無人機の大量配備が必要になるのである。

 共同通信がスクープした日米共同作戦の原案によると、「台湾有事」の初期段階で米海兵隊は鹿児島県から沖縄県の島々に臨時の攻撃用軍事拠点を置き、自衛隊と一体となって中国艦隊の通過を阻止することになっている。部隊の小規模・分散展開を中心とする海兵隊の新たな運用指針「遠征前方基地作戦」にもとづく実戦計画だ。

 自衛隊は海兵隊とともに琉球弧の島々に分散し、島から島へと移動をくり返しながら戦い、敵戦力の消耗を狙う(住民が戦闘に巻き込まれるリスクがきわめて高いことに注意)。こうした作戦を実行するにあたり、兵士1人でも扱える小型攻撃用ドローンは必須のアイテムというわけだ。


導入を阻止しよう

 イスラエル軍の攻撃用ドローンは今まさにガザ侵攻に用いられ、破壊と殺戮をくり返している。そんな兵器を大量調達し、同国の軍需産業を儲けさせることは、パレスチナ民衆に対するジェノサイド(集団殺害)や民族浄化に加担することを意味している。

 武器取引反対ネットワークの杉原浩司代表によれば、防衛省は3月末までに製造国(イスラエルなど)のテストフィールドで実証実験を行わせ、その結果を踏まえて機種を絞り込むという流れで、本格導入への作業を進めているという。

 パレスチナ民衆の血を吸って作られた兵器を使い、沖縄で戦争をする――戦争勢力の暴挙を絶対に許してはならない。   (M)

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