2024年03月29日 1815号

【株価4万円 格差広げるマネーゲーム/儲けているのは一握りの大企業と投資家】

 3月4日に日経平均株価が史上初の4万円を超えた。ネットには「いま株を買わない奴はバカ」とあおる極論まで出るほど株式バブル≠フ様相だった。ところが、11日には株価が一時1000円以上も下落し、その後も大きく変動している。落差はどうして生まれたのか。こうした状況をどうみるべきだろうか。

ごく少数への「恩恵」

 円安、中国経済の低迷、新NISA、日銀の低金利政策、半導体産業への注目などが複合的に絡み合い、その結果として現在の株高が生まれたと報道されている。だが、これらの要因を並べあげたところで、落差の実態は見えてこない。

 そもそも、株を売り買いする人はどれほどいて、持たない人はどれほどなのか。日本の個人株主は、2022年度で総人口に対する割合が11・9%である(表1)。過去の推移でも10〜11%台のままであり、新NISAで増えたとしても個人株主は依然として少数のままだ。株高の「恩恵」を受ける個人は限られている。

 

 では、だれが株を買っているのか、投資家別の売買動向(表2)から見てみよう。直近5か月の売買動向では、買い越し(株を売るよりも買うほうが多い)の回数が多いのは外国人と大企業をはじめとする事業法人である。今年1月の売買を見ると、外国人が2兆693億円の買い越し、事業法人が3767億円買い越しで、外国人投資家が株高を引っ張っている。なお、表2の「自己」は証券会社のことなので対象外とする。

 もう一つの特徴は、個人や都市銀行などの投資家が売り越し(買うより売るほうが多い)していることにある。都銀と他の金融機関にいたっては5か月連続で売り越している。

 このように、今年に入ってからの株高は外国人と事業法人の買い越しによって引き起こされたことがわかる。マスコミは外国人投資家については触れるが、事業法人について報じることは少ない。そこに大きな問題が隠されている。

内部留保で自社株買い

 事業法人の買い越しのなかには、企業が株式を自らの資金で買い戻す「自社株買い」が多く含まれている。マスコミは、この自社株買いの問題を明らかにしない。

 昨年、自社株買いを行った企業は1000社を超えており、「(上場企業の)2023年の取得枠は約9兆6000億円と2年連続で過去最高」(1/30日本経済新聞)となっている。

 問題は何か。自社株買いで企業が発行済みの株式を買い戻せば、株式市場に出回る株式数は減る。その結果、「当期純利益を株式数で割って求める1株当たり利益が増加する。株主にとっては企業からの利益の配分が増える」(22年5/2日本経済新聞)ことになるのだ。効率良く稼いでいると見せることも可能なので投資家の評価を高め株高を誘導することができ、株主への還元策の一つになる。

 では、自社株買いの資金はどこから出ているのか。多くは、過去最大の規模に達している内部留保(23年7〜9月で約528兆円)から出されている。この巨額の内部留保の背景には、企業が労働者の賃金削減で利益を増やしたことや資金を設備投資に振り向けていないことがある。

 内部留保を自社株買いに使うことは、いわゆる株式市場の健全さ≠損ねるだけでなく、株高を演出して株主に利益をさらに還元させるものとなる。つまり、関連株を持つ限られた株主だけにこうした株高の「恩恵」があり、圧倒的多数の市民は全く無関係のままに置かれ、いっそう格差が広がっていく。これが現在の株高の実相である。

 株高の大きな要因が外国人の買い越しなので、外国人が売り越しすれば株価は急落する。また、年度末前に利益を確定させるため株を売る傾向が高まり、株を下落させる要因となる。

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 ほんの一握りを大儲けさせるだけのマネーゲーム≠ノ踊らされてはならない。その富はもともと労働者が作りだしたものだ。それをため込み拡大し続ける大企業、富裕層から賃上げと課税強化で取り戻す時だ。
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